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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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#文学

阿部日奈子詩集『キンディッシュ』

詩集の幕開けとなる「行商人」から、肌触りが違う。 外国文学を礎にした前作『海曜日の女たち…

既視の海
6か月前
16

阿部日奈子詩集『海曜日の女たち』

しびれる。詩集名だけで読みたくなる。著者名も詩歴もまったく分からないが、気にしない。 そ…

既視の海
6か月前
23

小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささやきよ!』

Webちくまに連載していたときから楽しんでいた小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささや…

既視の海
8か月前
14

四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』

書けない苦しみ。溢れ出る驚き。 のちに偽詩人と呼ばれた吉本昭洋は、いずれも味わった。詩人…

既視の海
1年前
19

梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』を読む。『家守綺譚』『冬虫夏草』の綿貫や高堂の朋友・村田が留学した土耳古(トルコ)の滞在記。ディミィトリスと訪れた古代大城壁の場面がいい。下宿先の鸚鵡もいい味を出してる。It' s enough! 終盤のディクソン夫人の手紙に胸を締めつけられる。

既視の海
1年前
13

グレイス・ペイリー『人生のちょっとした煩い』【書評】

グレイス・ペイリー『人生のちょっとした煩い』を読む。 グレイス・ペイリーが生涯で3冊しか…

既視の海
1年前
18

ポール・ハーディング『ティンカーズ 』を読む。病膏肓の時計職人が死の8日前から思い出すのは、自分を捨てた癲癇もちの父、心を病んだ牧師の祖父。幻覚の中で三人それぞれの人生が交差する。古き良きニューイングランドが味わい深い。一人の人生に絞り、じっくり描いてあればもっと良かったのに。

ひとつの瞬間は永遠になりうる——ローベルト・ゼーターラー『ある一生』【書評】

1931年の冬の日、オーストリア・アルプスの麓で、壮年のエッガーはふとした予感から、山小屋で…

既視の海
1年前
8

はじめての小林秀雄

「批評の神様」とよばれる小林秀雄を読んでみたい。しかし、レトロな表紙の文庫本『モオツァル…

既視の海
1年前
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音のない輪舞曲——アンナ・カヴァン『氷』【書評】

音のない輪舞曲が耳から離れない。 世界が氷に閉ざされる直前のモノクロームなパ・ド・トロワ…

既視の海
1年前
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寺地はるな『みちづれはいても、ひとり』 #読了 。夫と別居中の弓子と、アパートの隣人で無職になったばかりの楓という不惑どきの女2人が、失踪した弓子の夫が目撃されたという島へ旅をするロード・ノベル。前向きな結末のはずが逆に、人間は本来どうしようもなく孤独なのだと痛感。再読必須。

既視の海
1年前
4

宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』を読む。婚約破棄されたOLの明日羽が叔母ロッカのすすめで「やりたいことリスト」を書き、実践し、自分を見つめ直していく。やりたいこと探しよりも、できることを増やす。毎日の暮らしを整えていく大切さを再確認。いい本というのは、勇気を与え、行動を促す。

既視の海
1年前
1

【書評】李 琴峰『五つ数えれば三日月が』

来日後たった3年の台湾出身作家が詩情あふれる日本語で書いた小説。 そういう見方が、好きじ…

既視の海
1年前
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【書評】エリエット・アベカシス『30年目の待ち合わせ』

登場人物の感情移入と物語への没入だけが読書の楽しみではない。運命であれ因果であれ、人間関係であれ、偶然性であれ、物語のなかで登場人物と著者が問いかけるものに答えたり、こちらからも問いかけたりしながら、読み手としても物語をともに創っていく。それも読書の楽しみだ。 だが、エリエット・アベカシス『30年目の待ち合わせ』を読んで、作中に自分が入り込み、登場人物と著者に対して、人生ってそういうものだよね、と声をかけるのではなく、自分の人生はどうだったのだろうと、物語とはまったく異なる