【書評】エリエット・アベカシス『30年目の待ち合わせ』
登場人物の感情移入と物語への没入だけが読書の楽しみではない。運命であれ因果であれ、人間関係であれ、偶然性であれ、物語のなかで登場人物と著者が問いかけるものに答えたり、こちらからも問いかけたりしながら、読み手としても物語をともに創っていく。それも読書の楽しみだ。
だが、エリエット・アベカシス『30年目の待ち合わせ』を読んで、作中に自分が入り込み、登場人物と著者に対して、人生ってそういうものだよね、と声をかけるのではなく、自分の人生はどうだったのだろうと、物語とはまったく異なる