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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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#詩集

阿部日奈子詩集『キンディッシュ』

詩集の幕開けとなる「行商人」から、肌触りが違う。 外国文学を礎にした前作『海曜日の女たち…

既視の海
6か月前
16

阿部日奈子詩集『海曜日の女たち』

しびれる。詩集名だけで読みたくなる。著者名も詩歴もまったく分からないが、気にしない。 そ…

既視の海
6か月前
23

高木敏次詩集『傍らの男』を読む 。静かな筆致で、他者を観察するかのように「私」を日常に溶かしていく。

夏の日を思い出そうとしたが
忘れたことを思い出した
(「目の前」)

非論理的な言葉のつらなりは、幻想的というよりも、揺らぐ現実性を帯びてむしろ自然。コルタサルを思い出した。

既視の海
6か月前
7

小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささやきよ!』

Webちくまに連載していたときから楽しんでいた小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささや…

既視の海
8か月前
14

四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』

書けない苦しみ。溢れ出る驚き。 のちに偽詩人と呼ばれた吉本昭洋は、いずれも味わった。詩人…

既視の海
1年前
19

『松本竣介 線と言葉』を読む。尾形亀之助詩集『美しい街』の挿画で知る。『運河風景』『並木道』に圧倒される。自分の眼で観たい。「戦争を描いても裸婦を描いても林檎を描いても画家の目が、厳然として永遠なものにつながってゐるか否かゞ大切だ」という言葉は文章や詩でも通じる。次は評伝を読む。

既視の海
1年前
11

『ネルーダ詩集』田村さと子訳編

「ネルーダ週間」は続く。ようやく、本命である田村さと子訳編『ネルーダ詩集』を読む。 詩や詩人についての映画をいくつか観たり、南米チリの詩人パブロ・ネルーダが登場する映画『イル・ポスティーノ』や『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』を観て感心するのは、人々が詩を暗誦できることだ。食事などの集まりにおいて詩を披露したり、酒場で誰かが暗誦し出すと、周りでも一緒に声をそろえる。有名な詩を暗誦できることが、知性の証しのように描かれている場合もある。詩が生活のなかに溶け込んでいて、ああ、いい

ジュンパ・ラヒリ『思い出すこと』中嶋浩郎訳

見えてはいるが、誰も見ていないものを見えるようにするのが、詩だ。 詩人・長田弘のこの言葉…

既視の海
1年前
24

尾形亀之助の第一詩集『色ガラスの街』、第二詩集『雨になる朝』を「あるきみ屋」により復刊された文庫版で読む。きのう書き写した「雨日」「夜がさみしい」はいずれも「どつちかといふと厭はしい思ひ」で出版した第二詩集に収録。できれば全詩を読み込んで、彼のさみしさの雫を感じたい。

既視の海
1年前
8

尾形亀之助詩集『カステーラのような明るい夜』

尾形亀之助の詩集『カステーラのような明るい夜』を読む。 先日の『美しい街』と重なる詩も多…

既視の海
1年前
16

尾形亀之助『美しい街』を読む。尾形亀之助は初めてではないにせよ、詩集としてまとめて読むと、後頭部をガツンとなぐられた気分。こんなに短く身近な言葉だけで、心情も情景も余韻も表わせるなんて。いたずらに長く難解な現代詩とはまったく別。松本竣介の絵もいい。まだ胸のどきどきがおさまらない。

既視の海
1年前
14

福永祥子『立方体の空』

福永祥子詩集『立方体の空』を読む。 瑞々しい言葉と懐かしさを覚える言葉が混ざり合い、不思…

既視の海
1年前
5

学ぶために読んだ2冊目の詩誌『凪』第二号。見開き2ページにおさまる詩も多くほっとする。なぜこの言葉を用いたのか、別な表現はなかったかと考えながら読む。最も響いたのは、水木なぎ『空気』。野宮ゆりさんと雪柳あうこさんは先日の詩誌『La Vague』と重なるが、実はこちらのほうが好き。

既視の海
1年前
3

松下育男『これから詩を読み、書くひとのための詩の教室』【書評】

行分けをしたわけでもなく、韻を踏んだこともない。しかし、これまで自分が書いてきた文章は、実は「詩」だったのではないか。そして、これから書きたいのも「詩」なのではないか。松下育男『これから詩を読み、書くひとのための詩の教室』を読んで、そんなことを考えた。 20代で「現代詩の芥川賞」と呼ばれるH氏賞を受賞し、雑誌『現代詩手帖』投稿欄の選者も務めた詩人が、2017年から「詩の教室」を開いている。本書はその講義録だ。 「詩とは何か」「なぜ書くのか」という根源的な問いや、「なにを書