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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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#随筆

齋藤美衣『庭に埋めたものは掘り起こさなければならない』

大きく息を吸い、とめて、潜る。水底へ。記憶の底へ。意識の底へ。深く潜るには、ゆるやかに息…

既視の海
2か月前
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いちむらみさこ『ホームレスでいること——見えるものと見えないもののあいだ』

朝。ロータリーの反対側にあるバス乗り場に押し寄せる高校生の波に逆らいながら駅舎に向かう。…

既視の海
5か月前
22

オリガ・ホメンコ『キーウの遠い空 戦争の中のウクライナ人』

2022年2月24日の、ロシアによるウクライナ侵攻から2年。いまさらながら今春、ウクライナからの…

既視の海
8か月前
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早川義夫『海の見える風景』

「一年前、妻が癌になって初めて、そばにいてやりたいと思いました。しい子は3月28日に亡くな…

既視の海
9か月前
38

ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』中嶋浩郎訳

インド系アメリカ人で、短編集『停電の夜に』でピュリツァー賞作家となったジュンパ・ラヒリが…

既視の海
1年前
15

四方田犬彦『モロッコ流謫』

映画『シェルタリング・スカイ』を初めて観たのがいつだったのか、正確には覚えていない。主題…

既視の海
1年前
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内田百閒「阿房列車」シリーズの『雷九州阿房列車』を毎年梅雨時に必ず読む。何も用事はないけれど三たび熊本の八代を訪れる百閒。ちょうど昭和28年西日本水害を引き起こした豪雨をすり抜けるように阿蘇、別府、門司を旅していく。可笑しく読みながら、この週末も九州の被害が拡がらないことを願う。

倉橋由美子『あたりまえのこと』を読む。もう何度目か分からない。40代と60代にそれぞれ書いた小説論。小説をおもしろくするのは「何を書くか」よりも「いかに書くか」。彼女の二人称小説『暗い旅』はその極み。強く薦める。あの村上春樹作品のラストを「ありえない」とばっさり斬るのも一理あり。

既視の海
1年前
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