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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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#書評

齋藤美衣『庭に埋めたものは掘り起こさなければならない』

大きく息を吸い、とめて、潜る。水底へ。記憶の底へ。意識の底へ。深く潜るには、ゆるやかに息…

既視の海
2か月前
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いちむらみさこ『ホームレスでいること——見えるものと見えないもののあいだ』

朝。ロータリーの反対側にあるバス乗り場に押し寄せる高校生の波に逆らいながら駅舎に向かう。…

既視の海
5か月前
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阿部日奈子詩集『海曜日の女たち』

しびれる。詩集名だけで読みたくなる。著者名も詩歴もまったく分からないが、気にしない。 そ…

既視の海
6か月前
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小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささやきよ!』

Webちくまに連載していたときから楽しんでいた小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささや…

既視の海
8か月前
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オリガ・ホメンコ『キーウの遠い空 戦争の中のウクライナ人』

2022年2月24日の、ロシアによるウクライナ侵攻から2年。いまさらながら今春、ウクライナからの…

既視の海
8か月前
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間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』

間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』を読む。 不死の身体を手に入れた「わたし」が、ひとり…

既視の海
9か月前
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四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』

書けない苦しみ。溢れ出る驚き。 のちに偽詩人と呼ばれた吉本昭洋は、いずれも味わった。詩人・四元康祐の小説『偽詩人の世にも奇妙な栄光』の主人公だ。 昭洋は中学生のときに、詩に出会う。中原中也に出会ってしまった。国語教科書にある詩を読むだけなら、どこにでもいる中学生だ。抱いたざわつきを胸に、図書館で中也詩集を手にとる。中也の詩をあさり、評伝で人物像にも迫り、山口を訪れて詩人の足跡をたどる。それは、もはや「詩を生きる」萌芽だ。自分でも書いてみたいと思うのは必然である。 だが、

エステルハージ・ペーテル『女がいる』

女がいる。僕を愛している。かつてはそうつぶやいたが、いまでは分からない。彼女は僕に、消え…

既視の海
1年前
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アレン・ギンズバーグ『吠える その他の詩』柴田元幸訳

アレン・ギンズバーグ詩集『吠える その他の詩』(柴田元幸訳)を読む。 1955年10月7日。ア…

既視の海
1年前
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内田百閒『冥途』 金井田英津子・画

あまり熱心な読者ではないけれど、内田百閒が好きだ。 何度も繰り返して読んでいるのは「阿房…

既視の海
1年前
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四方田犬彦『モロッコ流謫』

映画『シェルタリング・スカイ』を初めて観たのがいつだったのか、正確には覚えていない。主題…

既視の海
1年前
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ポール・ボウルズ『シェルタリング・スカイ』

ポール・ボウルズ『シェルタリング・スカイ』を読む。 調べると、2010年以来の再読。偏愛作品…

既視の海
1年前
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ポール・ボウルズ『雨は降るがままにせよ』

ポール・ボウルズ『雨は降るがままにせよ』を読む。 アメリカ・ニューヨークで銀行の預金係を…

既視の海
1年前
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大谷崇『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』

ある写真家についての随筆を読んでいたら、その写真家の思想はシオランに通じるという。 シオラン? それでシオラン入門として、大谷崇『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』(星海社新書)を手に取る。 1911年にルーマニアで生まれ、第二次世界大戦後のフランスで、この世を最悪のものとみなし、生きることを嫌悪するペシミズム(厭世主義、悲観主義)の思想を著したエミール・シオラン。母語のルーマニア語ではなくフランス語で執筆し、「暗黒のエッセイスト」とも