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SIX PEOPLE TEN LEGS


私が「オールナイトニッポン」を聴き始めたのは小学校5年の頃だった。
当時、二歳年上の兄や兄の友達がいつも話題にしていた番組に興味を引かれ、大した訳も分からずに聴き始めたが、
眠い目をこすりながら最後まで聴き通すのが、何だか大人の片隅に首を突っ込んだような気になって、興奮したものだ。

私の地元では、「オールナイト・・」の終わる時間は午前五時。
そのエンディングが終わると、「心のともしび」と言うカトリック系の宗教番組に切り替わり、あの誰もが知っている言葉が流れて、女優の河内桃子さんの朗読が始まるのだった。

「暗いと不平を言うよりも進んで明かりを点けましょう」

恐らくこの言葉を何らかの形で聴いた事のある日本人は相当数存在しているのではないだろうか。
私はキリスト教とは無縁な人間だが、この至極真っ当で小学生にも平易に理解出来る言葉が、マセた小僧の頭の中に摺り込まれたようだった。

そう言う輩は実はかなりの数いて、七五七五の語呂で

「暗いと不平を言うよりも」
と上の句よろしく言うと、
大概、
「進んで灯りを点けましょう」
続ける人がほぼ必ず居たりするのが凄い。

その心のともしびを監修しているジェームス・ハヤット神父の監督で1963年に製作されたのが、表題の映画。
僅か26分の短編だが、第28回ヴェニス映画祭(現ヴェネツィア国際映画祭)で、児童映画部門の第1位を受賞し、アメリカのCBC系列でも全国放送されている。


この映画、とにかく泣く・・。もう冒頭から涙が止まらなかった。
私は人より特に涙もろい男だが、これは誰の心にも響く作品だろう。

正直、セリフも演技も小学校の学習発表会級だし、演出もしかりなのだが、
人の心を打つ映画・・名作と言うのは、テクニカルな要素や監督の存在無くしても、一枚の紙に綴った優秀なる僅かなプロットさえあればこうした名作が生み出されるものなのだなと深く感じた次第。



冒頭から1分45秒はハヤット神父の解説。

舞台は京都のある小学校。
母親が足の不自由な息子を背負い、通学するところから始まります。


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