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【フードバンク取材】~『明日の食に不安のない京都』をめざして~ セカンドハーベスト京都の取り組み
公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美
研究員 船井 隆
弊所では、農林水産省と連携して大規模・先進的フードバンクの活動支援事業を実施しています。今回はその団体の1つである認定NPO法人セカンハーベスト京都の活動についてご紹介します。オンラインにて、理事長の澤田 政明さんにお話を伺いました。
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■活動の概要
――まずは団体の活動状況について教えてください。
澤田さん:
セカンドハーベスト京都は、2015年から活動している認定NPO団体です。「明日の食に不安のない京都」をめざして、京都府内に食料支援のネットワークをつくり支援の輪を広げるために活動しています。
主な事業は4つで、①フードバンク活動、②食のセーフティネット事業、③こども支援プロジェクト、④食品ロス削減啓発事業に取り組んでいます。昨年の2023年度は、行政や企業、個人のみなさまからの食品の寄贈や寄付を通じて、73.3トンの食品を取り扱い、福祉施設や自治体支援機関等との連携のもと、食料支援を必要としている4万人以上の方にお届けすることができました。
――それぞれの事業分野では、どのような活動をされているのですか。
澤田さん:
まず、中心となるフードバンク事業では、企業からの寄贈食品やフードドライブ等で集まった食品をフードパントリー団体や福祉施設などに提供する活動をしています。
食品を扱う企業からは年間を通して多くの未利用食品を寄贈いただいていますし、食品とは直接関係のない企業からも、防災用の備蓄食品をいただくことが増えています。また、ご家庭で使い切れない未利用食品を集めるフードドライブ活動を行政施設や協力企業のオフィスなどで実施していただくことも増加しています。
そうして集まった食品は、フードパントリー団体や福祉施設、子ども食堂などに定期的に分配され、そこから支援が必要な方へ提供されています。
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次に、食のセーフティネット事業では、福祉事務所や社会福祉協議会などの支援機関と連携をして、緊急の支援が必要と判断された方へ食品をお渡しできるようにしています。
生活相談の窓口に来られる方の中には、経済的に困窮し、お金も食べ物も尽きた状態の方がいらっしゃいます。その状況で支援機関に相談をしても、すぐに生活保護などの援助が支給されるわけではないので、その間をつなぐ生活物資として食品をお届けする体制となっています。現在は、京都府内26市町村のうち、12市町村でこの制度を整備しています。行政区域の地理的なカバー範囲でいうと約40%、人口ベースでいうと70%をカバーしているのですが、今後も支援対象区域を拡大していきたいと思っています。
現在はできていないのですが、食品を必要としている方への個別配送もできる体制が整えられれば、府内でのより広い支援ネットワークの構築につながります。
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また、こども支援プロジェクトでは、学校給食のない長期休暇中に、就学援助受給世帯などへ食品を直接送付しています。2024年度は1,000世帯を支援対象として設定しているのですが、申し込み開始から1週間で枠が埋まることもあり、子育て世帯への支援の必要性を感じます。
一般的には、ひとり親世帯の困窮がフォーカスされることが多いイメージですが、この制度を利用された世帯では、ひとり親世帯が6割ほどで、ふたり親の世帯も4割ほどいらっしゃいました。制度利用の背景としては、家族の病気や介護などにより生活が苦しくなった方が3割以上で、そのような事情で困窮されている方への支援は一つの社会課題だと思います。
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最後に啓発事業ですが、まだ食べられる食品が廃棄処分となってしまう食品ロスの問題について、京都市内の小中学校などで出前授業を実施して、その背景や削減の方法などをお話しています。消費者庁に認定された食品ロス削減推進サポーター6名が講師を務め、2019年から延べ2,300名以上の方に受講していただいています。
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■更なる発展へ向けて
――企業や行政との連携のもと、幅広い活動をされているんですね。京都のフードバンク団体のなかでももっとも規模が大きく、食のセーフティネットなど、地域において重要な役割を担われていると思うのですが、今後の課題などはありますか。
澤田さん:
セカンドハーベスト京都は、フードバンク事業の食品取扱量の点からみると、確かに京都の中では一番大きいですが、全国的にみるとまだ中規模程度の組織です。他の地域の先進事例として、団体としての基盤が整った大規模フードバンクが中心となって地域ネットワークを構築し、企業との連携や食品の融通などで効果的な運営をされているところがあります。
京都でもそのようなネットワークがもっと発展すれば望ましいですし、私たちが中核団体として貢献できる部分もあると思いますが、まだ具体的にシナジーを生むようなしっかりとした体制作りに着手できるほど、自分たちの組織基盤が強くありません。
――確かに、ネットワーク構築に動くと、そのぶん現場の人手が減ることもありますし、足元を固めるという意味で組織基盤の強化は必要なステップですね。特に重要な部分は何でしょうか。
澤田さん:
一番は人材です。これまで2年ほど、組織基盤強化のために採用活動をしてきたのですが、ようやく人員がそろってきました。今は、その新しく入った方たちに仕事を覚えてもらっているところです。
――フードバンク事業では、どのような業務を担っていくのですか。
澤田さん:
物流業務は必須ですね。ただ、車の運転、倉庫での作業などの部分に加えて、物流に関わる事務的な作業もできないと現場を回せません。また、それらの物流業務をしながらも、行政や企業とのコミュニケーションやロビーイングなどの活動も並行してやっていく必要があります。大きな団体であれば、倉庫担当、配送担当、渉外担当、という分業制もできますが、私たちの規模だと、全員がゼネラリストとして一通りのことを担っていかなければなりません。しかも、うちの場合は出前授業などもやっているので、本当に業務の幅が広いですね。最初は大変でしょうが、新しく入った方には、それを楽しみながら仕事を覚えていってもらいたいと思っています。今は色々な業務項目のリストを作成して、それを確認しながら少しずつでできることを増やしていく段階です。できるようになったらその項目をチェックしていく、という形式で。
――最近、人材育成の仕組みとして、できることを可視化するスキルマップが流行っていますが、それに近いイメージですね。新しく入った方々のそのリストが全部埋まったら、組織として大きな前進になりますね。
👇参考:動画で見る多様な業務内容👇
澤田さん:
そうやって組織基盤の強化が進んでいったら、京都府内のネットワークも前進させていきたいですね。地域で信頼されるフードバンクネットワークと認識されるようになれば、企業が食品の寄贈を考えるときの相談先として一本化されてスムーズですし、各団体が同じところにアプローチしてしまうという非効率な部分も減ります。
先日、「京都フードパントリーシンポジウム」というイベントを開催し、フードパントリー推進のため、府内外の団体が集まって課題を検討したのですが、都道府県単位で窓口となるネットワークの重要性やその効果についてはみなさん共通の認識として持てたと考えています。埼玉などで、ネットワークの効果的な運営によって飛躍的に食品取扱量を増やせた事例もありますので、京都でもそれを目指して取り組んでいきたいです。
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■編集後記:一歩先の課題への挑戦
お話をお聞きして印象的だったのは、地域における社会福祉への貢献から「京都ヒューマン賞」を受賞するなど、既に京都府内で大きな役割を果たされているセカンドハーベスト京都が、更なる発展を目指して着実に進まれている点です。
「明日の食に不安のない京都」の支援の輪を拡大させていくためには、効果的なネットワークが必要、そのためには、自分たちが全体のためにもっと動くことが求められる、さらにその余力を生むためには、自組織の基盤を強化しなければならない。だから、人員を増やして…。という逆算をしながら一歩ずつ進まれている点が素晴らしいと感じます。
人材育成の話もでましたが、そこでは採用に至るまでの苦労もお聞きしました。加盟している全国フードバンク推進協議会や外部の採用コンサルタントにアドバイスをもらいつつ、何度も求人内容の見直しなどをされたそうです。さらに、インパクトのある手法として、求人のための動画も作成されています。これは、30秒ほどの短い動画ですが、団体の活動の雰囲気などが非常によくわかるもので、求職者が事業に興味を持つきっかけになると思います(ちなみに、上にリンクがあるように、ロングver.の活動紹介動画も作成されています)。
👇参考:リクルート用の動画👇
フードバンク団体への取材では、人手不足を課題としてお聞きすることも多いですが、セカンドハーベスト京都はその課題に正面から向き合い、時間をかけて乗り越えて、現在は人材育成というところに取り組まれています。採用、そして育成というプロセスの事例として今回是非ご紹介したく、記事の焦点を当てました。
この部分については、引き続き重要なテーマとなるかと考えておりますので、弊所としても引き続き、調査研究・政策提言の面から貢献することを目指し取り組んでまいります。
澤田さん、貴重なお話をありがとうございました。
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