【詩】最期の眼差し
他愛無い話をして笑い合った
そこが病室であることを忘れてくつろいだ
しかし血色の無い唇は落ち切った砂時計のようだった
帰る時
私の頭から爪先まで目に焼きつけようとする瞳が潤んで光っていた
鼻先がツンとして溢れてしまいそうだったから
後ろ髪を引かれながら振り返ることはできなかった
次に会えた時はリボンの掛かった額縁の中で微笑んでいた
病室で笑い合えた日のことは
あれから何年経っても昨日のことのように思い出す
最期に私を丸ごと見つめていた眼差しが
今でも胸中を揺らす風となっている