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Galaxy Interactive Richard Kim氏が語る、web3ゲームエコノミーの十戒(part 1/3)

今回は、数々のweb3ゲーミングコミュニティに出資しているベンチャーキャピタル、Galaxy Interactiveのジェネラル・パートナーであるRichard Kim氏「web3ゲームエコノミー考察」、"Can Joy be Financialized as a Positive-Sum Game?"を取り上げます。

多くのweb3ゲームが失敗に至る理由、さらにはオープンエコノミーゲームが構築するために辿るべき発達段階など、非常に示唆に富んだ内容となっているので、ぜひご一読ください。

原文:https://galaxyrtk.substack.com/p/can-joy-be-financialized-as-a-positive



web3ゲームが生まれてから早5年。デジタル資産の所有権、流動性、コミュニティガバナンス、そしてプレイヤーやクリエイターへの利益拡大というメリットを謳い、莫大な資金がこれらのゲームに投じられてきた。しかし、目にみえる成果はほとんどない。

個人的には、大多数のweb3ゲームが以下の3つの理由によって失敗していると考える。

・ゲームデザインが浅すぎる
ステーキングや初期投機など短期的なエンゲージメントフックに焦点を当てすぎて、何にプレイヤーが関心を持つのか?という最も重要な問いを無視している

・予算・経験・適性面から考えて、明かに目標設定が高すぎる
「ブロックチェーン上で『ワールド・オブ・ウォークラフト』を構築したい」というアイデアは、これら3つを理解していない

・ゲーム内トークンおよびプロダクトの供給が投機的な需要を圧倒し、持続不可能なゲームエコノミーが生まれる
そしてポンジスキームのような価格動向を助長してしまう

しかし、個人的にはweb3ゲームの将来性にとても期待している。web3ゲームの大きな意義は仮想プロダクトを保有することではなく、法定通貨に変換可能(= fungible)なゲーム内トークンを生成することだ。ゲーム内アセットと法定通貨の互換性が保たれることにより、プレイヤーのゲーム世界に対する愛着を金銭的に還元することが可能になる。これを"Joy Premium”と呼ぶ。

注意しなければいけないのは2点、Joy Premiumが生まれる前の段階でゲーム内のリアルエコノミーが成熟していなければならないということ、Joy Premiumが正しい方法で構築されなければいけないということだ。それでは、どうやってJoy Premiumを構築していくことができるのか?
「オープンエコノミーゲームの十戒」を紹介するとしよう。

1:GMV(流通取引額)よりもGDPを優先すべし

web3ゲームを嫌う人が多いのはなぜか?リリース前段階のゲームが、過剰な投機の的にされるのを目の当たりにするからである。
web3ゲームの原罪は「GDPに対するGMVの先行」:
プレイヤー主導の経済的ループ(GDP)が成熟する前に、トークンやNFTなどゲームプロダクトの流通取引額(GMV)を最大化するためにリリース前のハイプ(話題化)を掻き立ててしまっていることにある。これが一過性のトレーダーを引きつけ、ゲームエコノミーの持続的な継続に必要なゲーマー達を辟易させることは容易に想像がつくだろう。

Joy Premiumはすなわち両刃の剣:
開始のタイミングが早すぎると、外的なマーケットの圧力がプレイヤーがそもそもゲーム世界に興味を持つことへのインセンティブを圧倒してしまう。多くのweb3ゲームはこの剣の真っ先に立たされ、プレイヤーの長期的な利益よりも資金調達の必要性やハイプ作りに専念してしまっている。

ゲームエコノミーは、以下のような順序を辿って徐々にJoy Premiumに移行していくことが望ましい。

1)フィアット(法定通貨)→ トークンへの一方向の変換
独裁的、自由形式(開発側が決定を下し、決定過程に制約はない)

2)PvEマーケット(ゲーム内プロダクト ←→ トークン、自動価格設定)
独裁的、ルールベース(開発側が厳正なルールに従って意思決定)

3)PvPマーケット(ゲーム内プロダクト ←→ トークン、手動価格設定)
民主的、ルールベース(開発者がコミュニティに意思決定を委託する)

4)フィアット ←→ トークンの双方向の変換(完全なオープンエコノミー)
民主的、自由形式(開発者が、 コミュニティに意思決定権を委譲する。コミュニティは規則に従い、制約なしに判断を下せる代表者を選出)

2:ゲームプレイ・ユーザー同士の交流意欲を活性化させるようなマルチプレイヤー環境を導入せよ

ゲームのバーチャル世界におけるGDPが「リアル化」するには、ゲームのコアアクション(探検、クラフティング、戦闘、交換など)にユーザーが本質的な価値を見出す必要がある。魅力的な世界観をベースに、ゲーム内インタラクションやスキルロードを厳密に調整し、プレイヤーに適正な試練を課していく必要がある。

ゲームデベロッパーのダニエル・クックは、機能性とビジュアルはゲームデザインの重要な一部だがその中核となる部分ではないと語る。彼によれば、ゲームの中心にあるのはいつでも好奇心と欲求に溢れたプレイヤーたち本人だ。ゲームをプレイしているユーザーは、リスクを取ることによる損害を避けること・想定よりも効率的に目標をクリアすることの両方を求める。この両者のバランスを取ることは非常に難しい。

3:ゲームナラティブの中心に暴力性を置くべし

平凡なサンドボックスを面白がる人はいない。有意味なゲーム世界は人間の欲求への深い理解と洗練されたデザインによって創作されなければいけない。暴力は人を団結させ、人々に新しい社会的繋がりを求めさせる。
アンドリュー・グローンは、「EVEオンライン」がここ20年プレイヤーを魅了し続けている理由は、完全なオープン空間だからこそ実現したゲーム内でのプレイヤー同士の間で裏切り、騙し合い、そして政治的駆け引きだという。また、PvP対決はゲーム内プロダクトの消費が最も多く行われる場所であるという点を忘れてはならない。


→part2に続きます!

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原文:Richard Kim、翻訳・編集:山田

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