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【創作】猫糞(ねこばば)【短編小説】 (全6話) #1
ねこ‐ばば【猫×糞】
[名](スル)《猫が、糞ふんをしたあとを、砂をかけて隠すところから》悪いことを隠して素知らぬ顔をすること。また、拾得物などをこっそり自分のものとすること。「拾った物を猫糞する」
帰りの会が終わり、和也はランドセルの中に教科書とノートを詰め込んだ。小学3年生にもなるとそれなりの量になる。忘れ物がないか確認して、ランドセルを背負う。すると2人の友人が和也に駆け寄ってきた。光男と純太だった。
「一緒に帰ろうぜ!」
「うん。帰ろう。」
光男と純太は小学1年生の時に知り合った。和也たちの学年は3クラスあった。3年生の時はみんな別のクラスだったのだが、3年生になってまた一緒のクラスになった。この3人は相性が良く、喧嘩などもあまりしない。一緒にいて楽しいと思える3人組だった。
一緒に帰っている途中で、光男がうちに遊びに来ないか?と言ってきた。この日は何の予定もない。和也は行くといった。純太も
「じゃぁ、ランドセルを置いたら行くよ。」
といった。
光男はにっこりと笑って、
「実は昨日新しいカードゲームを買ったんだ。それをやろう。」
といった。学校から一番近いのが光男。その先に和也と純太の家がある。
どんなカードゲームなのか気になった和也と純太は、駆け足でそれぞれの家に帰り、ランドセルを降ろすと自転車に乗って光男の家に向かった。
光男の言っていたカードゲームは、2〜4人でプレイできるゲームで、各々が経営者となって、様々なイベントやトラブルを乗り越え、一番得点が高いプレイヤーが勝者となるゲームであった。このゲームの特徴は、ターゲットを指定してお金を巻きあげるカードや、セキュリティを強固にして妨害を防ぐなど、駆け引きが物を言うところにあった。
和也はすぐ顔に出てしまう癖があった。純太も都合が悪いカードが渡ってしまうと、顔から汗がじわじわと流れていた。光男は2人の癖を見抜いた時から、2人に負けることは無くなっていた。
あっと言う間に時間が過ぎ、外からチャイムが流れてきた。5時になると流れる町のチャイムだ。これが家に帰る合図にもなっている。
「くそー。全然勝てなかったー。」
「光男強すぎ!何か反則でもしているんじゃないか?」
なかなか勝てなかった2人が光男をにらむ。
「おいおい、俺はそんなことしないよ!2人とも顔に出過ぎなんだよ。」
えっ?というように互いの顔を見る純太と和也。その様子がおかしくて光男は笑った。
「だって、状況が悪くなると汗を流したり、顔を歪めたりするんだもの。すぐわかっちゃうよ。」
2人は声をそろえて「な、なるほど。」といった。
光男はにこりと笑って、
「その分かりやすいの。長所でもあると思うけどな。」
と2人に向けて言った。嬉しいやら悔しいやら複雑な顔をしながら、「次は負けないぞ。」と光男に言った。
「じゃ、そろそろ帰る!またね!」
「次は勝つからね!」
そう言って2人はそれぞれの自転車にまたがり、家路についた。
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