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【創作】猫糞(ねこばば)【短編小説】 (全6話) #3

翌日。学校の休み時間に和也と純太、光男が話していた。
「あのさ、ちょっと聞いてくれない?」
なになに?と純太と光男が興味がありそうなそぶりを見せた。はぁっとため息をついてから和也が話した。
「昨日さー。僕のお菓子が消えちゃったんだよ。」
「は?どういうことだよ。」
光男が食いついてきた。
「昨日お母さんが用意してくれたお菓子を楽しみにしてたんだけどさ。家に帰ったらなかったんだよ。お母さんは僕が食べたと思ってたらしいんだけど、ほら。昨日はランドセルを置いて光男のところに遊びに行ったから、僕なわけがないんだ。」
すると近くにいた孝徳が和也たちの方にやってきた。
「それ、もらいジジイの仕業じゃないか?家に美味しいチョコクッキーがあると食べていく妖怪なんだけど、きっとそれだよ。」
するとそれに反応した光男が孝徳に怒鳴るように言った。
「そんな妖怪聞いたこと無いぞ。っていうか妖怪なんていねーよ!」
純太も孝徳に静かに呟いた。
「たしかに妖怪なんていないと思う。」
孝徳はいそいそと去り、自分の席に戻っていった。
「孝徳くん。もらいジジイなんて誰から聞いたのかな?本当にいるのかな。そんな妖怪。」
「しらねー!和也まで何言ってんの。そんな妖怪いないって。孝徳のことはよくわからないんだよな。」
和也と光男は孝徳と同じクラスになるのは初めてだ。純太は2年生の時に孝徳と同じクラスだった。
「僕は孝徳くんと同じクラスだったけど、確かに孝徳くんにはよくわからないところがあるかも。何考えているかわからないんだよね。あまり話さないし。友達とかいるのかな。2年生のころは、”嘘つき孝徳”って言われてた。」
そんなことを話していると休み時間が終わった。
授業を終え、給食を食べて帰る時間になった。
「和也と純太さ。今日もうちに来ないか?またゲームやろうぜ?」
純太は行くと即答したが、和也は用があるからまた今度。と断った。この日は和也の水泳教室だった。
「あぁ、そうだったか。残念だ。」
「また今度遊んでよ。」
「おうよ。」
こうして3人は一緒に話しながら帰ることになった。

その翌日。
教室に入ろうとドアを開けたら、朝から純太と光男がお互いの胸倉を掴んで喧嘩をしていた。それをみた和也は、慌てて2人のところに駆け寄った。
「おいおい!2人ともどうしたんだよ!?光男も純太も落ち着いてよ!」
和也は困った顔をしていた。周りもどうしていいか分からないといった顔をして、そわそわしている。
「光男が僕のことを泥棒っていったんだ!」
普段は物静かな純太が興奮している。光男も興奮しているようだ。
「あぁ!?本当のことだろう?俺のおもちゃ盗んだくせによー!」
「え?光男のおもちゃが無くなったのか?」
和也が光男に問う。
「あぁ、そうだよ。お前たちとやってたあのカードゲームが無くなったんだよ。俺がトイレに行って戻ったらな!」
「だから僕は取ってない!泥棒じゃない!」
そういって純太は光男の顔を叩いた。純太の手は光男の鼻に当たり、光男は鼻血を出してしまった。友達に殴られたショックで光男は泣き、純太も泥棒と言われたことがショックで泣いてしまった。和也は2人が泣くところを初めて見た。

そこに荒木先生がやってきた。荒木先生は和也たちの担任で、ベテランの女性教師だ。普段は優しいが、怒ると怖い厳しい先生である。
「あらあら!何があったの?みんな席についてね。」
光男は荒木先生に泣きながら言った。
「純太が…俺のおもちゃをとったんだ…。だから、俺…純太のことを泥棒って言ったんだ。そしたら顔を叩かれた…。」
純太も泣きながら、荒木先生に訴える。
「僕は取ってないし泥棒じゃないのに…。光男が泥棒泥棒いうから嫌な気持ちになっちゃって。顔を叩いちゃったんだ。」
荒木先生は2人の言い分を聞いている。
「光男くん。純太くんがおもちゃをとったところを見たのかな?純太くん。純太くんは本当に光男くんのおもちゃを取ってないのよね?」
純太は荒木先生の眼を見て言った。
「僕は本当に取ってないよ。」
和也も純太が嘘をついているようには見えなかった。
光男も泣いた眼をこすりながら荒木先生の眼を見ていった。
「純太がとったところは…見てない。でもトイレから戻ったら無くなってたんだよ。昨日は純太しかいなかったのに。」
すると、光男の近くに住んでいる光男の幼馴染のサツキが光男に言った。
「え?もう1人いたじゃない。私、見たよ。光男の家に入ってく男の子。あれは純太くんじゃなかったと思うけど。」
と、そこで始業開始のチャイムが鳴った。
「はい、チャイムが鳴りました。朝の会をはじめます。と、そのまえに。純太くんと光男くん。ちゃんと仲直りしてね。」
光男と純太はそれぞれうつむきながら静かに言った。
「純太…。その…。泥棒って言ってごめん。」
「うん…。僕も叩いちゃって…。ごめん。」
2人は静かに仲直りをした。
「それにしてもサツキちゃんがみた男の子って誰だろう?」
和也はこの日、一日中そのことを考えていた。


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