Xジェンダー不定性 『先輩はおとこのこ』を読む
僕が最近ハマっているアニメに、ぽむ著『先輩はおとこのこ』というものがあります
通称『ぱいのこ』とも呼ばれる本作は、ジェンダーモノとラブコメを掛け合わせた作品となっています
昔からジェンダーモノの作品が好きな僕は、この『ぱいのこ』にも、他人事とは思えない部分を多く見出してハラハラしながら読み進めています
以下、あらすじ紹介(一部ネタバレを含みます)
主人公は花岡まこと高校2年生
まことは、子どもの頃から可愛いものが大好きなのだが、生まれ持った身体の性別が男の子ため、母親からは小学校に上がる頃ぐらいから、男の子らしくあることを求められるようになる
それでも、かわいいものへの興味と憧れが先行し、母親に隠れて可愛いものを集めるようになる
やがて、中学の頃、母親に隠れて自室でスカートをはこうとしていたところ、母親に見つかり叱られてしまう
母親は部屋に閉じこもり泣きっぱなしとなり、まことの家庭での味方である父親のすすめで、男女どちらのせいべつとして登校しても良いという高校に進学する
そこでの高校生活では、まことは学校にはいる間はセーラー服と金髪ウィッグを着用し、下校時は学校の隅にある小屋で男子用の制服に着替えている(鍵は先生が貸し出してくれた)
そんなまことを取り巻く人間関係は、蒼井咲という1つ年下の後輩の女の子と、大我竜二という同級生の男の子である
咲は、まことが男だと知らずに告白したのだが、男だと知っても想いを変えることなく、積極的にまことにアプローチし続ける元気で明るい女の子である
竜二は、まことの幼稚園からの幼なじみみであり、親友でもある
幼稚園の頃にかくれんぼを行った際に出られなくなったところを、まことに見つけてもらい、その瞬間可愛すぎるまことに一目惚れしてしまい、それ以降はまことを守りたいという気持ちで一緒に行動している
僕は、本作を読んで、まことに毎回共感しています
ぽむ先生のインタビュー記事も読みましたが、あくまでも青春のエモさを描きたかったとのことで、僕としては「いやいや、それにしちゃマイノリティ側の気持ちを分かりすぎてて嬉しいですよ」という感想が強いです笑
具体的には、まことは常に自身のセクシュアリティについて自問自答と葛藤を繰り返し、咲や竜二以外の生徒とは他人と距離を置きがちです
ぽむ先生曰く、まことのドロドロした部分はあまり描かないようにしたと言われていましたが、それでも結構革新はついてるんじゃないかと思っています
また、咲の存在はまことにとって(というかマイノリティ側から読むと)大きな救いになっています
彼女は、男の姿のまことも女の姿のまこともどちらも好きだと笑顔でさらっと言いますし、まことが1度女装をやめて男の姿で生きようと(内心ではやめたくなかったけど、あえて女装をしていた自分と決別しようとした)したときも、まことが自分の心に嘘をついてることを見抜き、素のまことを尊重しようとしてくれます
作品としてはまだ全体の25%ぐらいまでしか読了していないので、今後はさらにどんでん返しが待ち受けているとは思いますが、今のところ咲は明るく天真爛漫なキャラとして描かれており、その天真爛漫さのなかに、さらっとまことの悩みも打ち消してしまうような、力強い肯定の態度が見られるのが、マイノリティ側としては嬉しいと思いながら読めます
一方、竜二も竜二で僕らからすると救いの存在です
彼は、生徒手帳にまことの女装姿の寝顔の写真をこっそり入れて持ち歩いていたり、何度もまことの可愛さにときめいては、そんな自分を気のせいだと否定したりしているのですが、どんなまことであっても、咲同様、尊重してくれる存在です
咲があっけらかんとした態度でまことのセクシュアリティを尊重するのに対し、竜二は見守り型です
僕も過去のnoteの記事に書いていますが、おそらく僕らセクマイの人たちを受け入れて認めてくれる方々って、基本的には竜二タイプが多いと思います
僕がよく言う「悲しそうな声の優しい人たち」パターンです
でも、実は咲タイプの明るく受け入れるパターンもかなり嬉しかったりします
おそらく、あっけらかんタイプは、難易度としては高くなるのかもしれませんね
また、まことが遊びに行った帰りの電車の中で、竜二に「こんな僕と友達でいてくれてありがとうね」と言うシーンがあります
僕はこのセリフにも強く共感しました
マイノリティ側として生きていると、やはりまことが抱えるような、「どうして自分は周りとは違うんだろう」という悩みは常にあり、また、周りからの視線などもどうしても気になってしまうため、どこかそういった部分では自分に自信が持てずにいるところがあります
そのため、自分と仲良くしてくれる人に対しては、まことが竜二に言ったような気持ちを持ちがちで、個性をまるごと受け入れて尊重してくれる人に対しては感謝の気持ちをつねに持ち続けていたくなります
これに対する竜二の「あたりまえだろ」という笑顔の返事も、マイノリティ側としては本当に嬉しいものです
さらに、学校以外でまことが女装をして出歩くシーンがあるのですが、まことはふとショーウィンドウに映った自分の容姿を見て、サッと目を逸らしてしまいます
あの、まことの恐怖を描いたシーンは、本当に秀逸だなと思いました
以前、僕が描いた記事に、心が男になっている時は鏡を見るのが嫌いだといった内容を書いていますが、そのときの僕の心情がそのまま漫画になっていたので、読みながら驚きました
以上、こういった点が主に共感するところなのですが、続きもすぐに読んでしまいそうだなと思っています
ちなみに、言わずもがな、本作は実は三者三様のマイノリティが交錯しています
主人公の名前まことはクロスドレッサー&ジェンダーレスであり、咲と竜二はパンセクシャルということになります
マイノリティがこうして自然と集まって濃い人間関係を築くのは、おそらく稀だと思うのですが(そこはアニメや漫画の世界なので)だからこそ、複雑な三角関係が面白いとも思います
さて、長々と作品の途中までの感想を書いてしまいましたが、本作を読みながら、まことを僕に重ねることで、咲や竜二もそれぞれ実際の僕の周りにいる人たちを重ねながら読んでしまう部分があります
咲は、このnoteにたびたび登場する「頭のいいライバー」くんで、竜二は、noteにはあまり登場しないけど、居心地のいい関係を築かせてもらっているネッ友の男性です
どちらも男同士の男友達みたいな関係を築かせてもらっていますが、それぞれの僕のマイノリティに関する受け取り方が、まさしく咲(さっぱり系)と竜二(しっとり系)に似ているので、ついそれぞれを重ねて読んでしまいます
あたりまえですが、ライバーくんとネッ友くん同士では、お互いに名前ぐらいは知っていても面識は全くないと思いますし、そもそも僕たちはそれぞれお互いに男友達として関わっているので、基本的にはサラッとした関係を築いています(あたりまえですが笑)
なんというか、マイノリティ側から見た受け入れ方が似てるよ、という話をしたかったので例に出しました
作品としては残り75%あるので、まだまだどんでん返しが待っていそうで楽しみです
続きを読んで、また共感することが出てきたら同じテーマで書きたいと思います