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しもやけと老眼

世間的には厄介なものと認識されているけれど、人生において一度体験してみたかったものが二つあった

一つが「しもやけ」
もう一つが「老眼」だった

しもやけに憧れたのは6歳のころ。仲良しのけい子ちゃんが毎年冬になると足をモソモソさせていたのだ

同じマンションに住む同級生のけい子ちゃんは、英会話を習っていた。なにぶん45年も前の話なので、そんなハイカラな子は周りにはいなかった。子ども心に「けい子ちゃんってイケてるわぁ」と尊敬していた

「なんでいつも足モソモソしとるん?」
「しもやけやねん」
「しもやけってなに?」

しもやけというのは冬に出来て、すごくかゆいんだ、と説明してくれた

私もしもやけになってみたいと言ったら、「やめとき。ほんまにかゆいねんで」と靴下を脱いで見せてくれた。
彼女が足の指を手で押すと、赤い豆粒みたいなものが浮き上がった

「これがしもやけやねん」
やめときと言いつつ、けい子ちゃんは少し得意げだった。覗きこんでいるうちにどうしても「しもやけ」になりたかった

「寒いとなるから、冷たくすればいい」
さすがけい子ちゃん。家から洗面器を持ちだして、真冬のマンション駐車場の洗い場で水に足をつけるという「しもやけ特訓」なるものを開始した

残念ながらその年は成果が出ないまま春がきて、私は首都圏の小学校に転校することになった

関東での初めての冬、念願のしもやけになった。
大事にしていたキキララの便せんに「けい子ちゃんお元気ですか?私はしもやけになりました」と書いて投函した。彼女からも「やっとなれてよかったですね」と返事がきた

でもあまりのかゆさに悶絶して、翌年からはしもやけにならないように、母に言われた通り、水を入れた洗面器と温かい湯船に交互に足をつけて、一人で進化版しもやけ特訓をした。けい子ちゃんとやったことは、しもやけにならないためのものだったんだなーとおもいながら。

           ◆

老眼に憧れたのは大人になってから
40そこそこで老眼になったという職場の綺麗な先輩が
かなり度の強い老眼鏡を使っていたのだ

老眼鏡をかけた彼女の目は、こちらからは倍くらい大きく見える。彼女の目からは、老眼鏡を通すと世の中ってどんなふうに見えるんだろう

さすがに大人なので「どんなふうに見えるん?」とは聞かなかったが、幼い頃にしもやけに憧れたのと同じくらいの熱量で「私も老眼になってみたい」とおもっていた

もともと近眼なので、憧れの世界を体験することなく40代を終えた。50の誕生日を迎えたら、「おおおお~これが老眼か」という状況になった

電子書籍を読むときに焦点が合わなくなったのだ

老眼だ~とウキウキしたのは最初だけ
なんだ、近眼とかわらないじゃないか
むしろ細かい字だけという限定がある老眼は厄介だ
メガネなら外したり、かければいいが
私はコンタクト使用者、字を読むときだけレンズを外すというのは、すこぶる不便&不経済なのだ

ワンデーは使い捨てなので保存液を持つという感覚がない。最初のうちは、細かい字を読むためだけに1日3回くらいレンズを外す羽目になった

しもやけは「しもやけ特訓」で克服できたが
老眼って良くなることはあるんだろうか?

やっぱりメガネ? とりあえず眼科にいかなきゃ


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