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胎教か遺伝か

胎教の影響てあるんだろうか。

未婚出産の私は娘がお腹にいるとき、保険の約款ばかり読んでいた。早急に経済的な基盤を整えねばと、夜な夜な電卓をパチパチ。

生まれた娘は、やたらと銀行通帳に興味を持った。曲げちゃったりすると困るので、記帳済みの一つ前の通帳を握らせたらポイっと投げて見向きもしない。ただただ現役の通帳に興味深々。

まさか偶然だろうと、現在使っている通帳と古い通帳を二つ並べて「おいで、おいで」とやると、娘は一目散に新しい通帳に向かってハイハイで突進していった。別の金融機関の通帳で試しても古い通帳には見向きもしなかった。

この子にはなにか特殊能力があるかもしれん。もしやこれが胎教ってやつか?と考えた。

が、残念なことに新旧の通帳を見分けられる能力の使い道はさっぱり思い浮かばなかった。

あぁぁぁ~ごめん。モーツアルトでも聴くんだった、と本気で反省した。


月日が流れて15歳になった娘は、それはそれは立派なケチんぼに成長した。

わが家の近所にオーケーストアという何かと安いスーパーがあるのだけど、買い物に行くと娘は「うわっ!78円だって。学校の自販機160円なんだよ」「すごっ88円?このアイス、購買だと170円」などとやたらと興奮している。

毎度毎度、買いものにいくたびにギャーギャーいうので、てっきり普段は160円、170円の正価で購入しているのだとおもったら、「えっ?買うわけないじゃん。オーケーなら88円なのに」と。

お友達はみんな部活の前にアイスか肉まんを食べるのを楽しみにしているのに、娘は一切買い食いをしないのだそう。

「ええ~、お友達と食べるから楽しいのに。部室で肉まんが青春なんじゃない」と物申したら、「だって購買の肉まん200円もするのに、大きさこの半分なんだよ!」と、冷蔵庫から某メーカーの3つで450円の肉まんを出してきて、チンしている。

甘い物も牛乳も苦手なので、放課後のスタバもお付き合い程度。ドーナツ5つ食べる同級生を見るだけで胸やけがするとミスドはパス。部活がない日はサッサと家に帰ってきて、焼き芋にキムチ(すごい組み合わせ)をのせて食べることを至福の喜びとしている。

はぁぁぁ。この人生の橋を一度渡り切ってしまったような妙な落ち着き。もっと人並みに女子学生らしくキャピキャピな楽しみを味わってほしかったぞ、母さんは。


このケチんぼ娘が「はぁぁぁ、ママってほんと呆れちゃうほどケチだよね」などと不届きなことをいう。

聞き捨てならん!「ズルい」「セコい」「ケチ」はわが辞書にはあってはならん言葉なのに。

バスケのバッシュがサイズアウトしたので、三連休に買いに行ったときのこと。

赤いラインが気に入っていたのに緑しかないとブツクサ文句を言っているから、スマホで調べたら、ワインレッドの似たようなものがあった。

「これは?」と聞いたら、冒頭のセリフ。

店頭に並んでいた娘が買おうとしたものより3000円ほど安かったのだ。

「どうせママは安いからこっちにしてほしいんでしょ」などとほざく。

むっかぁぁぁ。なんと生意気な。オーケーで170円のアイスが88円だと大騒ぎしているくせに3000円の違いを切り捨てるとは。ケチ道精神に反しておる。

あれ?こうなると娘のケチは胎教ではなく、遺伝なのかしら?





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