夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】11

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

そうこうしていると、まゆからの連絡が入る。


すぐさま向かうとだけ伝えて電話を切る。


ダッシュで外に向かう茂太の後を追うように、たっくんが浮遊しながら着いてきた。


『たっくん、昼も平気なのか?』
『霊が闇夜にしか姿を見せないってのは、人間が勝手に決めた都合のよすぎる解釈だわ。確かに私も人間だった頃、霊に対してそういう偏見を持っていたから何も言えないけど』

おかまの霊は素直でもあった。
不気味でもあるがどこか憎めなくて可愛さを感じるのは、この素直さが原因だろう。


『憑依したら飛ばなくていいんじゃないか?』
『そうだけどそれはNGよ。茂太がまたオカマに成らざるを得なくなるから』


流石に茂太もそれは嫌だった。
たっくんを見て微笑み、たっくんもまた微笑み返した。

会場にはもう出場メンバーは勿論、まゆもすでに到着していた。
松木や柴田の姿もあった。
一同が揃った豪華な顔ぶれとなった。

こつこつとハイヒールの音が廊下に擦れて心地よく響く。
まゆの先導で楽屋に赴く。


まゆはたっくんの存在に気づいていない。
たっくんがそれを自由に操作可能なのだろうか。


それとも自分以外には弘樹と柴田にしかその姿は見えないのだろうか。

楽屋に入る。
松木と柴田に深くお辞儀をする。


『お早う御座います。本日も何卒、宜しくお願い致します』


柴田は思わずくわえていた葉巻をポロリと落としてしまった。
その場に居た全員が眼を疑った。


いつだって冷静さを崩さなかった柴田が動揺を見せたこと、何よりもその動揺が行動に転じたことに。


だが居合わせた誰もが何をそうさせたか?
それらは一切分かることがなく、話したところで信じてもらえるか怪しいものだ。


寧ろ、本来はスピリチュアルに関与するもので、真に信じきっていない限りは誰一人として信用しないだろう。

まさか、霊がこの場に居るなんて。
しかもオカマの霊だなんて。


茂太だけが柴田の行動の真意を理解できた。
それを分かっている茂太にありがとうとウィンクで合図した。


『みんな、大丈夫だ。少し葉巻の落下に対して重力と引力が如何に影響をもたらすのか、実験してみたかっただけだ』


柴田はそう言ってスタッフひとりに落ちた葉巻の掃除をさせた。

入念な打ち合わせが終わった。
バンブー社の看板雑誌でもある【THE!わらい】の最新号に、今回の取材記事とライブ【レッツ!美銀2】の模様が掲載される。


取材のスタンバイまで完全に整った。
準備は万端だ。
メンバーやスタッフ陣は、取材開始時間までの約半時間を、自由気ままに寛いで過ごした。

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