長編恋愛小説【東京days】7
この作品は過去に書き上げた長編恋愛小説です。
えっ』
『だっていい話だし、掘りさげないと勿体ないよ』
呆気に取られながら言葉を返す。
出会った頃とは逆の立場になっているではないか!
少し僕は恥ずかしくなった。
『何、赤面してるのよ』
『いや、何でもないから』
深く息を吐き出す。
『今は別の作品を書いてるんだ。完成したらその作品を書き直すつもりなんだ』
『私も一緒に書きたい』
『いいよ』
和む会話。時計を見てそろそろ帰らなくちゃ!と口にする。
『送っていくよ』
『うん、ありがとう』
僕は奈美をJRの最寄り駅まで送っていく。
『また、会いたいね』
『いくらだって会えるよ』
『本当』
『本当よ』
駅の改札口で奈美の姿が消えるまで、僕は手を振り続けた。
新しい恋の予感。僕の東京生活四年目は、このためにあったんだ。
突然、舞い込んできた幸せを大切にしたい。
心から僕は強く思った。
連絡のやりとりが増え出した八月の半ば、僕は奈美の暮らすマンションの部屋の模様替えの手伝いをすることになった。
汗ばむ季節。奈美と一緒に部屋の改造だ。
ベランダの窓ガラスを開けると心地よい風が入ってくる。
僕はノコギリでベニヤ板を、床の面積の半分を埋める大きさに切ってゆく。
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