夢を叶えた五人のサムライ成功小説【川端雄平編】3
この作品は過去に書き上げた長編成功自己啓発ギャグ小説です。
周囲から頑張れよの歓声が沸き上がる。
雄平は戸惑いながらも勇気を振り絞って、こんなチャンスは二度とないぞと受け止めて、二つ返事ではいと即答した。
これはビッグチャンスだ。
一流芸能人で名高い本村拓也の弾くギターに合わせて、歌うことができるなんて成功の波の到来だ。
生唾をゴクリと飲み干し、雄平はイントロが流れ出すと同時に咳を二度、そしてミネラルウォーターを飲み、喉の渇きを潤した。
歌い出したその瞬間、本村拓也はギターを弾くことを止めた。
そして雄平に近づいて一言告げた。
『才能あるじゃん。でもまだまだだね』
バイトを終えた雄平はいつものように公園へ向かった。
公園には恋人の白河由里がすでに待っていた。
今日の出来事を話すと由里もまた驚きを隠せなかった。
と同時に雄平に張り手を喰らわせた。
『モムタクが来てるなら何故、私に連絡くれなかったのよ。私がモムタク狂(教)だって知ってるでしょ』
凄い剣幕で怒鳴る由里。
サッカーをして遊んでいた子供たちの視線が二人に集中する。
『子供たちが見てるじゃないか。今後は気をつけるよ。本当にごめん』
『今後って・・・。モムタクとそう何度も会えるわけないじゃない』
『会えるさ。俺はモムタクに才能あるって言われたんだ。プロになったら共演さ』
由里は呆れて返す言葉が見つからず、溜め息だけが空中を舞った。
子供のひとりが話しかけてきた。
『お兄ちゃん、これから歌うの?』
『そうだよ』
雄平は滑り台の砂場に座り込み、ギターを抱え、怒り冷めやらぬ由里の隣でピックを見事に操った。
そのアップダウンストロークは手慣れたものだった。
奏でるメロディーが公園全体を包み込む。
聴きいる子供たち。
由里も次第に雄平の姿を見ていて、いつもの優しい眼差しに戻った。
数曲を歌った頃、怒号がこだまする。
『へたくそな歌やないかい!やめんかい』
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