夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】4
この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。
しばらく歩くといつもの居酒屋があり、相変わらずの盛況ぶりを誇っていた。
三人?は暖簾をくぐって席に腰を下ろす。
店主が近づいてくる。
こじんまりとした和を強調させている店内は心から落ち着きをもたらしてくれる。
『何にしましょう』
『とりあえずお冷やを三つ』
店員はえっ?と思ったのだろう。
聞き返してきた。
『三つですか?二つではないのですね』
『はい、三人・・・いえ、とにかく三つお願いします』
『は・・・はい』
店員はしっくりこない面持ちでその場を後にした。
『私はとりあえず、焼き鳥三本と揚げ豆腐に担々麺。それとチューハイね』
茂太と弘樹はすっかり、オカマの霊にペースを奪われ、やれやれといった感じだった。
『ねぇ、あなたたちは何にする?』
オカマの霊は容赦なく勝手にあれこれと注文するように二人に伝えた。
三人は運ばれてきた品々を口に頬張る。
やけ食いするふたり。
それをよそにチューハイのグラスが空中に浮遊する。
眼を疑う店主とその場に居合わせた客たち。
そんな周囲の様子に気づかず、三人は飲めや騒げや食べまくれのオンパレードで、もはやトチ狂った哀れな子羊と化してきた。
恐る恐る成り行きをずっと見ていた店主が、声を掛けてきた。
『お客様、あの~・・・』
完全に酔いがまわった茂太は眼を恨めしそうに細めて店主の顔を見た。
『ひぃ~』
店主は思わず叫ぶと同時に謝罪した。
『すみません。じつはじつはですね』
弘樹が聞き返す。
『どうかしましたか?』
『グラスが・・・グラスが宙に舞ってます』
茂太と弘樹は我に返り、やべぇ~とばかしに誤魔化してその場をしのいだ。
『これは手品です。僕ら芸人です』
店主は呆気に取られ、二人の顔をよく眺めてみるとようやく彼らがお笑い芸人のフライパンズだと気づいた。
店主は大声を張り上げた。
『あぁ~ほんまや。ほんまや、フライパンズの二人やぁ』
店内に響く声。
一同の視線が集まり、二人は注目を浴びた。
客の中には写メを撮るものまで居た。
だが、悲しいことに誰もサインをせがまなかった。
たっくんはその様子をじっと眺めては終始無言で笑っていた。