長編恋愛小説【東京days】9
この作品は過去に書き上げた長編恋愛小説です。
『はい』
『奈美』
『だから何』
『う~ん、最高の気分だよ』
『訳が分からない』
僕たちは顔を見合わせて無邪気に笑った。
奈美の住まいに立ち寄る際に買っておいたドリンクを二人で飲む。
『ここって本当にいいでしょ』
そう言葉を口にする奈美は本当に、この場所が気に入っているのだろう。
『御苑の気を感じることが出来るからだろう』
『うん。今も強く感じる』
僕と奈美はベランダに出て、新宿御苑の庭園が存在する方向へと顔を移した。
幸せだ。
本当に幸せだ。
奈美と共有する時間の中で存在することに、胸は小刻みに震えていた。
夢見心地のなかに立ち尽くし、数分くらいだろうか・・・。
照りつける太陽の陽射しの追い討ちもあって、うとうとしていた僕の体を奈美が揺さぶった。
『さぁ、続きを始めましょ』
一呼吸の間があく。
『えっ、あっ!そうだね』
ほんの一瞬、僕の偽りない気持ちが心を支配した。
ここで奈美と暮らしたい。
床一面に張りつくされたベニヤ板に、僕たちはハケでニスを塗っていく。
シンナーで頭がやられそうだ。
乾くまでに時間もかかる。
『頭が変になりそう』
『元々、僕たちは変わり者みたいだからいいんじゃない』
奈美は怪訝な表情で僕を睨みつけた。
『馬鹿』
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