ティンゲリー美術館(バーゼル)
皆様こんにちは。今回はnoteのお題から、 #一度は行きたいあの場所 について書きたいと思います。
スイス、バーゼルはアートの街であり時計の街でもあります。街には沢山の美術館があり、どこを見ても本当に景色が美しいです。
2015年に滞在した時の季節は2月でスキーシーズン真っ只中。山は白く覆われ街に流れる小川の水と空気がとても澄んでいました。
この空気感、グランドセイコーの雫石に行ったときに似ています。時計というのはやはり空気がきれいなところで作られるのでしょうか。
バーゼル滞在の目的は、スイスムーブメントのブローカーさんにお会いする事でしたが、これだけアートが溢れる街で美術館に行かないのは惜しい、ということでティンゲリー美術館とビール(ビエンヌ)にあるオメガ本社に隣接したオメガ美術館へ行きました。
今回はティンゲリー美術館についてお話しします。
ジャン・ティンゲリー(Jean Tinguely, 1925年5月22日 - 1991年8月30日)
スイスの現代美術、画家、彫刻家。
彼は廃物を利用して機械のように動く彫刻を制作することで知られており、キネティック・アート(動く美術作品)の代表的な作家である。またダダイスムの影響を濃く受けており、第二次世界大戦後のフランスで誕生した美術運動、ヌーヴォー・レアリスムのメンバーでもあった。
代表的なシリーズに「メタメカニック」(metamechanics) が、その他「メタ・ハーモニー」シリーズ、「死の舞踏」シリーズ、「哲学者」シリーズなどがある。
(ウィキペディアより)
ティンゲリーはバーゼルでアートを学びパリで活動していましたが後にバーゼルに戻って廃材で動く彫刻を制作しました。バーゼルには彼の作品がパブリックアートとして見られます。
ティンゲリー美術館は彼が収集した様々なモノで作られた立体物が並んでいます。
廃材はきれいに磨かれているわけでもなく、ところどころペンキがはげていたり、鉄は錆色をしていて一見すると「ゴミ山?!」と思ってしまうようなものも、ひとたびボタンを押すと動き出すのですから驚きです。
この暗い部屋の廃材たちが動くさまがなんとも言えなかった。シルエットが素敵すぎる。
動画にまとめてみましたので、是非ご覧になってみて下さい。
以前は活躍していたであろう、タイヤや工場の機械パーツ、鉄パイプ。
それらは動くときにギ―、ギー、と音を立てます。それは耳に優しい音ではなく私にはまるで、過去の物質主義を批判をしたような哀しい音に聞こえました。
また、ティンゲリーのキネティックアートは見る人を楽しませると同時にティンゲリー自身も楽しんで制作していたであろうと想像させます。これはモノ作りの基本だと私は思っていますが、モノを「役に立つのか、そうでないのか」という事だけで決めてしまう超資本主義的な考えも彼の作品の前では無力な気がしました。
一つ一つはゴミでも
それらで再構築された芸術は
生命を吹き込まれ
悲哀を抱く鳴き声で私たちに訴えかける
このご時世でモノの価値観、人々の生き方、考え方が大きく変わりました。
ティンゲリーの作品は、今の時代に改めて新鮮に受け入れられるように思います。
バーゼルに行かれる機会がありましたら是非訪れて欲しい美術館です。
美術館の中でもひときわ大きなキネティックアート。これも動くし、登れるんです。子供は大喜びしそう。
逆さに吊るされたおひげの人形。動くたびに頭が水に浸かって拷問な感じなのに、人形が微笑んだままなのがシュール。
庭の噴水オブジェ。決して華麗ではない。ギーコ、ギーコと音を立て水を噴射、というか辺りにまき散らしてるイメージ。うちの庭にも欲しい。
正直言えば私も廃材アートを制作したいのですけれど、家に沢山の廃材を持ち込むだけでゴミ屋敷認定でご近所に通報されそうな気がします。(笑)
旅行、まして海外へ行くことがまだまだ難しいこのご時世、海外都市に滞在したのが今はもう遠い昔のように感じます。
バーゼルはもう一度行きたい場所の一つです。
・・・でも時計の世界最大見本市バーゼルワールドも中止を決めましたし時計業界も展示会をことごとくなくしているので、仕事で行ける機会は減りそうです。
年々縮小気味の香港ウォッチ&クロックは今年開催のようですが、さてどうなるのでしょうか。
次回はオメガ美術館についてお話ししたいと思います。
(余談)バーゼル市内の映画館では、当時ジブリの「かぐや姫の物語」が上映されていました。