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ASDのぐるぐる思考は同じ曲をリピートしている感覚に似ているかもしれない

自閉症スペクトラム(ASD)当事者はこだわりが強く、同じ行動を繰り返したがる傾向があると言われています。いつも同じ服を着ないと気が済まなかったり、日々のルーティンワークが崩されるのを嫌ったりするなど……

ASD当事者の私には、そこまで激しいこだわりはないのですが、ネガティブな思いがいつまでも頭の中をめぐることがあります。いわゆる「ぐるぐる思考(反芻思考)」ですね。それはあたかも、同じ音楽を何度も何度も聴いている状態に似ています。

「ASDの人の脳のなかって、例えるならどんな感じなの?」

と、もし質問される機会があったら、私は迷わずこう答えるでしょう。

「ヘッドフォンをしながら同じ曲をリピートして聴いているような状態かな」と。

ここではASD当事者である私が、ぐるぐる思考に囚われているときの感覚について語ります。

ASD当事者である私のリピート体験


私は実際に、ヘッドフォンをしながら同じ曲を繰り返し聴くことを好みます。それに関しては、こだわりと言っていいかもしれません。聴覚過敏で、電車に乗っていると雑音で気分が悪くなるときがあるため、音楽を聴いて気を紛らわせることが、もはやクセになっています。

発達障害と診断されてから約1年間は、耳に穴が開くんじゃないかと思えるほど、ある曲を繰り返し、繰り返し、聴いていました。The Beatles の ”A Day In The Life”です。

この曲って、聴いたことある人なら納得していただけると思うのですが、どことなく暗いです。落とし穴がいくつも隠されていそうな、深みや恐ろしさがあります。発達障害と診断されて落ち込んでいた私が、そのブラックホールにドップリはまってしまったんですね。

発達障害と診断されたとき、反応は二手に分かれると思います。

  1. 「私のこれまでの失敗は発達障害のせいで、自分のせいではないんだ!」と安心するタイプ。

  2. 「発達障害を抱えたまま、これからどう生きればいいんだろう……」と不安になるタイプ。

私の場合は圧倒的に後者でした。当時はコールセンターに勤めていたものの、電話応対が苦手な特性があることが診断により分かったため、この職場から抜け出すのに必死でした。

今はもう、そのコールセンターを退職して、一般の会社で配慮を受けながら働いているため、”A Day In The Life”を繰り返し聴くことも少なくなりました。それでも、他の気に入った曲を、相変わらずリピートして聴く傾向があります。

ASD当事者がぐるぐる思考に囚われると何に困るか


さて、ASD当事者がぐるぐる思考に囚われると、いったい何に困るのか。自分だけの世界に閉じこもり、コミュニケーションを取りづらくなることがあります。

1.自分だけの世界に閉じこもってしまう

ASDは100人中約1人いるそうです。ただでさえマイノリティーなのに、悩み事を抱え込んでしまうと、いっそう孤独感がつのってしまいます。

「どうせ悩みを打ち明けても、誰からも理解されないんだろうな」そう思うと、行き場のない悩みは、自分の頭のなかだけを堂々巡り。さらにこだわりが強いため、その悩みに延々と囚われてしまうことも、しばしばです。

2.コミュニケーションを取りづらくなる

ASD当事者が自分だけの世界に閉じこもってしまうと、誰かと人間関係を築いたり、コミュニケーションを取ることが、どうしても難しくなってきます。

たとえばあなたは、ヘッドフォンをしながら大音量で音楽を聴いているときに、誰かから話しかけられたら、上手く反応できますか?おそらくほとんどの人が、呼びかける声に気づかないと思います。

それと同じように、自分のことで頭が爆発しそうになっているASD当事者は、他人のことまで気が回りません。家族や友人が話しかけても上の空。さらに声を荒げて呼びかけられたら、かえってイライラをつのさせてしまうでしょう。

まとめ


ASD当事者のぐるぐる思考を、ヘッドフォンをしながら同じ曲をリピートして聴いている状態に例えて解説しました。ぐるぐる思考に囚われてしまうと、自分だけの世界に閉じこもってしまい、コミュニケーションを取りづらくなることがあります。

こだわりがあるのは決して悪いことではありません。ひとつのことに集中してのめり込めるのは、ずば抜けた強みとも言えます。

それでも、もしこれをご覧になっているASD当事者が、ぐるぐる思考で息苦しくなることがあったら……自然の豊かな場所を散歩したり、身体を動かしたり、深呼吸するなどして、気持ちを楽にしてほしいなと思います。

※ぐるぐる思考を解消するには、ウォーキングがおすすめです↓


【どうでもいいおまけ】

ちなみに、今いちばんリピートしている曲がこちら。
”Ain't No Mountain High Enough”
多くの歌手にカヴァーされて、いくつかの映画でも流れている名曲ですが、Marvin GayeとTammi Terrellのオリジナル・ヴァージョンが最高です。


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