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再録「あのときアレは神だった」〜タケちゃんマン

テレビアニメ、漫画、スポーツ、アイドル歌手などなど。実在の人物から架空のものまで、昭和にはさまざまな「キャラクター」が存在した。
われわれを楽しませたあの「神」のようなキャラクターたち。
彼ら、彼女たちの背後にはどんな時代が輝いていたのだろうか。
懐かしくて切ない、時代の「神」の軌跡を振り返る。

(2015年より、夕刊フジにて掲載)

女子に聞かせられない男子高校生の仲間内の会話なんて相当に残酷なものである。

クラスに「タケちゃんマン」というあだ名の女子がいた。1981(昭和56)年のことだ。

タケちゃんマンとは、『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)のなかで、ビートたけしが演じたキャラクターである。

赤い奇っ怪な王侯ブルマ風衣装に金の帽子、一直線の太い眉毛と赤いほっぺたが特徴で、「ナハ、ナハ、ナハ」などと言いながら、明石家さんま演じるブラックデビルとの闘いを続けていた、例のアレだ。

タケちゃんマンは当時の小学生だけではなく、高校生や大学生あたりにまで響いた。それはタケちゃんマンが、いわばパターン化が始まっていた「正義の味方」のパロディーであり、「へんなヒーロー」という「善玉キャラ」の新しいありかたを提示したからである。

「ああ、ヒーローだって、ふざけていいんだ」

テレビの前のわれわれは混乱しながらも、ありがたくこのへんなキャラクターを拝観した。

1981年といえば、鈴木善幸政権下、神戸ポートピアの開催、トヨタ・ソアラの発表、土光敏夫さんの第2次臨時行政調査会発足など、戦後高度経済成長の総決算を予感させていた。

風俗流行の分野では、ピンク・レディーが解散、イギリス・ダイアナ妃の結婚、写真週刊誌の創刊もこの頃である。映画ではスピルバーグの『インディー・ジョーンズ/レイダース失われたアーク』が公開された。

そんな頃、不世出の天才・ビートたけしのもとに突然、「タケちゃんマン」は降臨した。この「神」キャラの影響が後年の高齢化社会にどのようなかたちで噴出するのか、それは未知数である。 (中丸謙一朗)




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