再録「あのときアレは神だった」〜草刈正雄
テレビアニメ、漫画、スポーツ、アイドル歌手などなど。
実在の人物から架空のものまで、
昭和にはさまざまな「キャラクター」が存在した。
われわれを楽しませたあの「神」のようなキャラクターたち。
彼ら、彼女たちの背後にはどんな時代が輝いていたのだろうか。
懐かしくて切ない、時代の「神」の軌跡を振り返る。
(2016年より、夕刊フジにて掲載)
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イケメンなんて言葉がまだなかった頃の元祖イケメン、それが(現在、NHK大河ドラマ「真田丸」で真田昌幸役を好演中の=2016年)草刈正雄である。
男どもの部屋に、男である草刈正雄のポスターが貼ってあった。男が男に憧れ、そして本気で好きになる。
萩原健一に高倉健。アラン・ドロンにスティーブ・マックイーン。『イージー・ライダー』のポスターにチャールズ・ブロンソン。草刈正雄がデビューし活躍した1970年代には、(部屋の片隅のファンシーケースとラークのゴミ箱とともに)そんなものが当たり前の「景色」としてあった。
カッコいい先輩や兄貴分は、僕らの生活の指針であり、ハリのようなものとなっていた。彼らが教えてくれる、ヘアスタイル、ファッション(スタジアムジャンパー、ダンガリーシャツ、肩にかけるセーターなど)やメンズ化粧品(MG5、ブラバスなど)、あるいは、きっと当時の女子を魅了していたのであろう(どこか恥ずかしげな)「キメ」しぐさ。
まだ「剥けていない」子どもたちは、必死の思いでその足跡を追い、研究し、少しでも近づこうとした。(そのさまがあまりにも熱狂的だったので、70年代後半の某漫画内で「まさかりくさお」という名でパロディー化された)
草刈正雄がMG5のCMで大ブレークしていた1972(昭和47)年は、「ウーマンリブ」運動真っ盛りの時期だった。
だが同時に、「男は男らしく」「女は女らしく」、男女双方はそれぞれの異性に対して少しでも「魅力的な存在」になろうとしていた。そして、僕らには、まだ見ぬ生身の女子に立ち向かうために、いまで言うところの「意識高い」先輩たちの「神的」力が必要であった。
イケメンなどという単なる造作の話ではない。身も心も「ハンサム」なカッコいい男。僕らはそれに従順だった。 (中丸謙一朗)
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