「味の素広告」の考察
調味料や食品を扱う企業「味の素」のブランド広告。食事で使われるうま味調味料が認知されている企業でもある。
1. なぜアイデアとして優れているか?
ダ・ヴィンチの絵画作品「最後の晩餐」をパロディにし、「最初の晩餐」として変換している。
作品自体が有名なものなので、直感的に絵画のパロディであることが認識でき、比較的万人に認知されやすい作りになっている。
最後の晩餐においてはキリストの「死」を思わせるものであるが、
本広告の「最初の晩餐」では赤ちゃんに変わっており、「生」を感じさせる。
食事は「生きる」ための第一の要素であり、赤ちゃんが人生最初の食事をしているシーンを切り取ることで、食を通して未来をつくっていくという企業メッセージを感じることができる。
2. ビジュアル表現のよさは何か
「味を扱う企業」として重要なことは、様々な味、食品を見せ、食事に関わっていることを強調することにある。
このビジュアルでは、たくさんの赤ちゃんを並べる見せ方によって、それに合わせた食事も横一列で並べることができ、味覚の多様性を表現することができるという理にかなったビジュアルである。
また、背景や机はあえて赤ちゃんそれぞれの家にすることで、味の違いが直感的に認識できるビジュアルでありつつ、各家での初めての食事というリアリティが伝わる表現となっている。
3. 構図の妙は?
絵画がベースにあるので、どこまでを絵画のルールに則り、どこを崩すかによって印象がかなり変わってくる題材である。
この広告では、「最後の晩餐」の構図を守ることで、直感的にオマージュであることが認識できる見せ方。
最後の晩餐と比較すると、中心に奥行きを持たせた一点透視図法である一方、この広告ではそこまでの再現性はなく、机と、横1列に並ぶ人というところを共通の構図として、あとはタイトル「最初の晩餐」によって理解させる体裁をとっている。
4.批判的視点
背景写真と子供の構図が合っていないように感じて違和感があるため、もう少し角度や色味を揃えるなどして、合成感をなくした方がまとまりのある印象になるのではないかと思う。
5. 個人的な感想
未来を担う赤ちゃんと食事を題材にして、
企業メッセージを伝えるという手法は、ブランディング広告として成功していると思う。
パロディというものは、なにもないところから作るよりも、知っているものだ!という共感性から、印象に残りやすいのではないかと思う。