「夜の水族館」の広告
水族館が期間限定での夜の営業に伴う宣伝広告。
1. なぜアイデアとして優れているか?
「夜の水族館」というテーマを、日中のビジュアルでうまく表現しているところに面白さがある。
夜という表現を、団地に並ぶ布団によって「粗相した布団」→「水族館の夢を見ている」→「夜」という連想で想像できてしまう。
本来は、粗相が海の生き物の形になることやシミが青くなることはないが、非現実的な表現に振り切ることで「魚の夢を見ている」ようなイメージができ、結果として、魚の夢を見てしまうほど楽しかった状況が想像できるようになっている。
2. ビジュアル表現のよさは何か
「水族館の生物の形を模したおねしょ」自体を表現するために、「団地の窓から洗濯物を干す」という体裁が自然で理にかなっている。
団地の窓であればたくさんの魚を表現でき、水族館の特徴の1つでもある「たくさんの種類の魚がいる」ことが表現できる。
また部屋の布団ではなく「干した布団」という見せ方にすることで、直感的に「粗相をしたシミ」でたることが認識でき、コピーと相まってビジュアルの意図が瞬時に理解できる体裁となっている。
3. 構図の妙は?
右手前(団地の窓か並ぶ)から左奥に向かっていく一点透視図法の構図となっていることで、団地の布団が真っ先に目に入る構図。
団地も1棟ではなく、奥にもう1棟配置されることで、建物か密集して並ぶ、団地ならではのリアリティが演出できている。
また右下に木を置くことで、自然に情報の可読性を保つことができている。
4. 批判的視点
おねしょのシミを海の生き物の形にするという非現実的な表現はいいと思ったが、魚の輪郭がはっきりしすぎているようにも感じる。
青い色がついていることで汚さは感じないと思うので、もう少し水っぽく、シミに見えるにじみがあるとよかったのではないかと思う。
5. 個人的な感想
水族館は、「エンタメ」の1つとして楽しまれる場所である。中でも、普段の生活では見れない生き物を見られる機会であるので、家族で楽しむエンタメのイメージもある。今回はそんな利用者をターゲットとして、子供のおねしょのシミを魚に見立て、子供が楽しんでいたことが直感的に想像されるビジュアル。
水の生き物たちを表現するにあたって、水の夢=おねしょに繋がる点も一貫性を感じた。