第1章:始まりの神託(2ページ目)
目を覚ましたとき、月乃は見知らぬ場所に立っていた。
暗闇に包まれた空間の中、遠くには無数の星が輝いている。だが、それは夜空とは異なる感覚だった。星々が生きているように脈打ち、その一つ一つが月乃に何かを語りかけているようだった。
「……ここはどこ?」
辺りを見回しても、地面も風も何も感じられない。ただ星々が静かに瞬いているだけだ。まるで宇宙そのものの中に放り込まれたような不思議な感覚。
「月乃よ……。」
再びあの声が響いた。今度はもっと近く、もっと深く胸に届くように。月乃は振り向いた。
すると、彼女の前に現れたのは、一人の人影だった。それは人間の形をしているが、全身が青白い光に包まれており、輪郭が揺らめいている。その目には星々が宿り、無限の深淵を覗き込むような感覚を覚える。
「……あなた、誰なの?」
月乃の声は震えていた。だが、相手はその質問には答えず、ただ静かに語り始めた。
「お前が選ばれし巫女だ。星宿の力を受け継ぎ、この星を守る存在となるのだ。」
その言葉は、月乃の心に重く響いた。巫女――それは祖母から聞かされてきた昔話の中だけの存在だと思っていた。それが、どうして自分に?
「守るって……なにを?どうして私が……。」
彼女の問いに、人影は答えた。
「地脈が危機に瀕している。この星を生かすための命脈だ。それを狙う者たちが迫っている。」
「狙う者たち……?それって、誰が……。」
言葉を続けようとした瞬間、遠くから何かが迫ってくる音がした。それは轟音というよりも、空間そのものがねじれるような低い振動音だった。月乃は思わず後ずさりした。
すると、人影が一歩前に出る。
「恐れるな、巫女よ。お前には星宿の力が宿る。それを解き放つ時が来た。」
月乃の足元が光り始める。まるで星空が足元に広がったような錯覚を覚えた次の瞬間、光が一気に彼女を包み込んだ。
「いや、ちょっと待って!」
月乃が抗おうとしたが、その声はかき消され、視界は完全に白に染まった――。