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Minecraftの人気が根強い理由
配信者がプレイするゲームタイトルの代表格となっているサンドボックスゲーム、『Minecraft(マインクラフト)』。YouTubeやニコニコ動画など、動画共有サイトには数多くの実況プレイ動画が投稿され人気を博している。
原形となるベータ版が登場してから既に9年以上が経っているタイトルだが、運営・開発がマイクロソフト社に移管され、Windowsのアプリストアで販売されるなど、未だ根強い人気を誇っている。世界観やグラフィックを同じくするアクションゲーム『Minecraft Dungeons』が発売されたり、教育用途に調整されたバージョンが提供されたりと、ジャンルや使い方に広がりが生まれているのも特徴的と言えるだろう。
このゲームには、明確な終着点が用意されていない。そのため、一般的なストーリー仕立てのタイトルと比べると動画ごとの区切りや目標を立てにくい。
表面上の癖だけを見れば、Minecraftはあまり実況向きではないように思えてくるのだが、実際には最も実況者に楽しまれるゲームのひとつとなっている。これは一体どういうことなのだろうか。
今回はMinecraftが持つ独特で、実況者を熱中させる要素を取り上げるとともに、人気が長続きするタイトルの要件について考えていこう。
操作は単純、組み合わせは複雑で無限大
Minecraftのゲームシステムで最も特徴的な要素は、ブロックの設置と組み合わせによって構成されたワールドとビルディング要素である。
1マス1mほどの大きさに見立てられデザインされたブロックは、自然界に生成されるものだけでも多種多様である。草木の生い茂る土の地面は、砂漠に行けば砂になり、寒地に行けば雪や氷として存在している。そして、地面を掘り下げれば石の層が現れ、鉱石が点在しているのだ。
これらのほぼすべては、プレイヤーの手によって回収することができ、また設置し直すことも可能である。そして、そのまま用いるだけでなく加工や合成によって別のブロックに変換することもできる。ゲーム内で作業を進めるのに必要な道具やアイテムもその例外ではない。すべてのものが、ブロックを砕き拾うところから始まっているのである。
ブロックを回収し、加工をし、また設置する。この一連の動作がMinecraftの基本となっている。徹底的に共通化され、シンプルに洗練されていることで、プレイヤーは複雑に考えて遊ぶ必要がない。
また、強力な敵を倒すRTAのようなスタイルでない限りは、操作の巧拙がゲーム内の成果に直結することがない。作業時間が長いか短いかの違いだけで、誰でも同じことができる。これは、ゲームが得意でない層にとって非常にありがたいことである。
ゲームシステムの単純化は、初心者の触れやすさを作る一方で、上級者や熟練プレイヤーの飽きを招くこともある。Minecraftの場合はどうだろうか。
確かに、操作系統が統一され、反復的な作業になりがちという面は、あまり面白いものではない。ただフィールドを駆け回るだけであれば、一通りやることを終えてすぐ興味を失ってしまうだろう。
しかし、このゲームの場合はブロックを回収し、置き直すという単純な動作にこそ、プレイスタイルの深みを持たせているのである。ただ土を積み上げるだけでも、プレイヤーの発想とアイデア次第で家になったり橋になったりする。木の柵として用意されたブロックが、絨毯と組み合わされておしゃれなテーブルにもなる。『ブロックを置く』という同じ操作、同じ工程で様々なものが表現できるというのは、遊ぶ側も見る側も実に面白くてワクワクする要素である。
実際に、こだわりの建築物を紹介するプレイ動画などは、各人の創意工夫が随所に伺えて視聴しがいのあるコンテンツとなっている。巨大建築のスケールはもちろんのこと、家具や照明器具、調度品の類も標準で用意されたブロックを組み合わせて見た目を作っているのだから驚きだ。単純作業の積み重ねからこうした作品が生み出されていると思うと、このゲームの底知れない奥深さに感嘆せざるを得ない。
目標がないからこそ、自分で目標を作る
前述のとおり、Minecraftにはこれといった明確なゴールが用意されていない。
といっても、ゲームの進行状況を示すものとして実績ツリーはあるし、エンダードラゴンというボスキャラクターや、クレジットが流れるエンディングは一応存在している。だが、エンダードラゴンを倒したとしてもMinecraftの世界はリセットされないし、実績をすべて解除したからといってやることがなくなってしまうわけでもない。そういう意味で、到達目標が存在しないゲームなのである。
では、プレイヤーは何をモチベーションにしてこのゲームをやり続けるのだろうか。実のところ、Minecraftにおける目標は、プレイヤー自身が思い描くものに委ねられている。つまり、プレイヤーが自ら個性的な目標を作り出し、それに沿ってゲームを遊んでいるのである。
とはいえ、このゲームで長い時間をかけてやることといえば建築である。現実にもありそうなこだわりの家を建てたり、歴史的な建造物を模して作る企画は面白いが、これだけプレイヤーの多いゲームではネタ被りもマンネリ化もありそうなものだ。既に他のプレイヤーがやったことの二番煎じでは、過程をただなぞるだけで退屈しそうに思えてくる。
ところがMinecraftの場合、同じような目標を立てて遊んだとしても、プレイの面白さや新鮮さは劣化することがない。字面では同じことをしているように見えても、実際はまったく別の行程を辿ることになるからだ。
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