「認知症⁈ 全然大丈夫、全部O.K.、 ケセラセラ♪」2
認知症の人と家族の会
福岡県支部会報「たんぽぽ」2021年10月号 寄稿エッセイ②
第2章 七転八倒の暗黒時代(1)
私は当時、社会福祉士として高齢者福祉施設に勤めていましたが、責任のあるポジションで、家や母のことなど顧みず、夜まで仕事をすることも多くありました。
そんな中、ドイツの高齢者福祉施設へ視察に行く機会があり、その出張のお土産で買ってきたゾーリンゲンの包丁が、なんと翌朝ギザギザの傷だらけに!
私「何しんしゃったと?!!!」
母「研がんと使えんけん…」
私「何、バカなこと言って、せっかく買ってきたのに(怒)!!」
最初に気付いたおかしな行動がこれでした。その後に続く数々の異変。
家庭菜園のミニトマトが緑のままちぎられ続け、白米に少し混ぜて炊いていた、雑穀「だけ」のごはんが炊き上がったり、洋服の上に下着をつけたり…。
ただ、中華料理のテーブルを囲んだ時は、回ってくる料理に毎回「これ初めて食べる♪」という発言があったり、「ここで待っとって」と言っても、いなくなって探したり、その時は認知症など考えてもいませんでしたが、思い返せばその兆候はもっと前からあっていました。
日々高齢者や認知症の方々と接しており、いくら問題行動があったとしても、仕事であるし他人だから距離を置いて冷静に対応していましたが、いざ母となると話は別。出来るだけ避けていたい母と向き合わざるを得ない状況になる。身内に大変な認知症患者を抱え、今までの自由な生活が一変するのは火を見るよりも明らか。
非難を恐れずに敢えて書きますが、当時の私は
「どうしてくれると!認知症になるのは、自分が悪いったい!!」
と、母を責め怒りをぶつけ、これから始まる認知症介護生活に不安や混乱に陥っていました。(つづく)