コンフェスコ 16/n はじめての会話
ダフネは木の陰から思い切って一歩前に出て、ジャンに声をかけました。
ジャンは声に気がつき、ゆっくりとダフネのほうを見て夜の挨拶をしました。
ダフネは緊張のあまり声がうわずってしまい、そんな自分が恥ずかしくなって上手く言葉を返せませんでした。
ジャンはやさしく笑うと今日は月がきれいだねと声をかけてくれました。
ダフネはうわずる声でそうですねと返し、空を見上げました。
きれいな、まあるい月の明るい光が澄んだ空気を透過して広場をやさしく照らしています。
月のやわらかな光の美しさを見ていたダフネは次第にこころが落ち着いてくるのを感じました。
ほんとうに きれい
吐息がもれるようにダフネは言いました。
ジャンはにっこり笑って、頷いています。
ジャンは名前を名乗ると、歌うことが好きでここでよく歌っている、だからよかったらまた来てねとダフネに言いました。
月の位置を確認すると、ジャンは今日はもう帰る時間だと言って、ダフネにお辞儀をしてダフネの来た方向とは逆のほうへ立ち去って行きます。
ジャンは一度ダフネの方へ振り向き、またね、と言って木々の奥へと姿を消しました。
ダフネはまた会えると思うと嬉しくて嬉しくて、声を掛けたかったのですが言葉になりませんでした。
ダフネは少しのあいだ、まあるい月を眺めていました。