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京口VS寺地戦についてとあれこれ
2022年11月1日WBC、WBA統一世界スーパー、ライトフライ級タイトルマッチがさいたまスーパーアリーナで行われ、WBC王者の寺地拳四朗(BMBジム)がWBAスーパー王者京口紘人(ワタナベジム)から7回にTKO勝利を収め、統一王者となった
2人は2学年違いだが、大学時代から対戦経歴があり対戦成績は3勝1敗と上回っていた年上の寺地氏が、4勝目を上げた事になる
ちなみに京口氏は王座を明け渡したわけだが、彼が以前君臨したいたスーパー王者というのは何かを説明したい
各階級の王者は原則としてボクシングの各織団体ごとに認定される
世界的なボクシング主要4組織団体であるWBA、WBC、IBF、WBOで各1名づつ世界王者が存在する
本日のような各団体の王者同士の対決戦などで勝利し、複数団体から認定を受ける世界王者をスーパーチャンピオンとしている
京口氏はライトフライ級以外にも一回級下のミニマム級でもIBFのタイトルを奪取しているし、ライトフライ級ではスーパーチャンピオンからタイトルを奪取している為、最初からスーパーチャンピオンな訳である
試合の前日、減量の様子を公開していた京口氏の表情は明らかにやつれていた
試合当日には回復させてくると思っていたが、当日も顔面はやたらやつれ切って目は虚ろだった
減量失敗を思わせるその雰囲気は、結果が悪い方向に向かうのを予想させた
私は京口氏にKO勝ちをして欲しかった
拳四朗氏有利な予想が多い中、予想に反して豪快に倒し「どんなもんじゃ」とその勝利の甘美なる快楽を味わい、喜ぶ京口氏の姿が見たかった
その姿を自身に投影させ、私自身を奮起させようとしていたのだ
ボクシングの世界のチャンピオンベルトは物凄く高価で重量感があるわけではなく、特にリングマガジンのベルトに至ってはペラペラでちゃちい
このベルトの為に人生かけて練習と減量をし、ボコボコな顔で汗だくでベルトを巻くボクサーの姿が最高に男臭く、カッコ悪くてめちゃめちゃカッコいいのである
私が中学時代に擦り切れるほどVHSで見た試合がある
ボクシング大国ベネズエラの英雄で4階級制覇していたレオガメス氏に壮絶な打ち合いの末、10ラウンド後半にすんばらしい左ストレートのカウンターでKO勝ちされたセレス小林氏の試合である
セレス小林氏のタイトル奪取の瞬間がYouTubeにあがっているので、是非見てほしい
勝利の瞬間、絶叫するセレス小林氏はリングサイドに上がってくる奥さんと一緒に号泣する
お二人の顔はぐちゃぐちゃだ
そのぐちゃぐちゃの顔が人間の空気を読むとか今はこうした方がいいかとかがない、ただひたすら悦びで号泣しているのを表しており、ああなんで素晴らしいんだと私はもらい泣きしていた
そんなセレス小林氏程、腰に巻くWBAのベルトが似合う人はいないと思った
リングネームの「セレス」というのは自身が現役時代に勤務していた冠婚葬祭会社の結婚式場の名前から取ったそうだ
当時、セレス小林氏は世界チャンピオンでありながら冠婚葬祭の仕事をし、尚且つえげつない減量とトレーニングをしてボクサーをしていたのだ
そのひたむきさには土下座して尊敬するしかない
ボクサーは日本チャンピオンになっても、手取りのファイトマナーは1試合100万程度である
合宿費やジムの経費を差っ引くと利益はほとんどないといっていい
日本チャンピオンになってもボクサーはバイトしているのである
さらにボクシングはチャンピオンのいる、あるいは挑戦するジムが興行をうってタイトルマッチを行う為、世界チャンピオンになっても資金のあるジムでなければ興行を打つことが自体が困難で、ジムの選手が勝利してスポンサーが入っていてもジムの純利益はほとんど無く、ボクサーのファイトマネーは1000万を下回るなんて事がある
一方、かの井上尚弥氏のファイトマネーは2億である
ボクサーは夢を追って、飯を食わずにスポンサーに頭を下げて殴り合いを商売にしているのである
なんと夢があって夢がないのだろうと思う
無名のまま、打たれすぎて廃人のようになって野垂れ死にしたボクサーは数多くいる
東洋太平洋チャンピオンになっても、いろいろな事に限界を感じていつのまにか身を引いた名ボクサーが幾人もいる
甲子園に熱狂できるように、ボクシングのタイトルマッチ以外の新人ボクサーの生き様にも心は燃やせる
それは後楽園ホールで窺い知れる
私はできる限りリングに賭けている汗だらけの無名の男達に拍手を送りたいと思うのだ