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掌編小説 「白黒」 377文字


まぶしい丸い光と、一本の塔があるだけ。
ただ、それだけ。色は、その白と黒だけ。
花も鳥も風も月も、春も夏も秋も冬も。
美しさは微塵もない。無機質な二要素だけ。
たまに光が動いて、塔の後ろに隠れる。
ただてさえ少ない色が一つ減り、全ては闇に呑まれる。全て、と言えるほど何かあるわけではないが。
塔自身も、自身が見えなくなる。孤独なオンリーワン。
しかし、光はまた気まぐれに塔の背中から顔をのぞかせる。そして、定位置へ戻り、白が帰ってくる。
意味はない。規則性もない。動きたいから動いているだけ?いや、意思があるかも分からない。
それだけ。この世界はそれを繰り返すだけ。
いつからあるのかわからない。いつまであるのかわからない。彼らがいつ死ぬのか、そもそも生きているのか、もっとそもそも彼らが何なのか、ぜんぶわからない。
でも、それでいい。それだけでいい。それだけの、白黒の世界。




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