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進撃の巨人に出逢ってちょっと人生変わった話。

「マンガなんか読んでないで勉強しなさい」
…そんなお説教をしない親のもとに育ったことを感謝している。
素晴らしいマンガとの出逢いは、人生の岐路で何かと影響を与えてくれている。自分にとって「進撃の巨人」はその最たるもの。

数年前、乗せてもらった親戚の車の中にポンと置かれていた「進撃の巨人 1巻」。
たしかその時の読後の感想は「主人公、いきなり食べられてもーたやん!
しかも車中には、続く2巻がなかった…。帰ったら買おうと思ったきり忘れていたんだよ…、ゴエンア…。

作品との再会は、それから数年後。仕事でとんでもないプロジェクトに関わり日々が挫折の連続で、初めて本気で辞めたいと思っていた時だった。
何を思って読み始めたのかはもう覚えていない。
あの日に車中で止まったままだった物語にアタマから突っ込んでいった。

人を喰らう巨人がいる世界、巨人相手に奮闘する人類。謎は多いものの分かりやすい構図、立体機動装置という個人的大好きポイントも見逃せない。
そして何より心惹かれたのはそこに生きる人たち。
他に類を見ない世界で、そこに生きて戦う姿はとても魅力的だった。
何かを目指し、希望を抱いて葛藤し、挫折し、何かや誰かを失っても立ち上がって前を向く。絶望してもそれでも進む。

世界や状況は違えど、登場する人たちの思考や行動に自分のその時々を映しては自分を鼓舞していた。「あいつも頑張ってんだしな…」なんて、どこから目線か分からないような共感を勝手に抱いたりして。

強い人が強く、弱い人が弱いだけじゃない。弱い人が絞り出す勇気の一面、強い人が見せるやりきれない想い、特殊な世界・状況だという事を除けばきっと誰にでも思い当たるフシがあるような状況を文字通り必死で生きている。
登場する人の思いや行動が一つ一つ丁寧に描かれているおかげで、それだけでも十分にハマる内容だった。

どんどん物語が進み、そのうち違う視点が加わった。…と言うかもう加えざるを得ない展開。物語を俯瞰する視点。
信じてきたものがあっさりひっくり返り、しかもその背景はとんでもないものだった衝撃。ギャー!と叫びながらもその深さ、面白さに床を転がる勢い。
答えは1つじゃないということに少し安心し、大いに絶望した。感情が忙しい。

あちこちで言われているように進撃の巨人は、おそろしく緻密でものすごい数の伏線が張られている作品だと思う。それが明かされて俯瞰で見られたときのゾクゾクする感じはとても言葉で言い表せない。諫山先生、天才か。

物語は今、読み始めた頃には想像も出来なかった領域を進んでいる。よくある「どんでん返し」とか「驚きの展開」なんて言葉じゃ生ぬるい。
想像もしない展開を進んでいるのに、今まで読んできた物語の様々な場面と強く結びついてますます深まる。これを最初から仕込んでいたなんて…。
もう一度言うが、諫山先生、天才か。

自分の人生に伏線があるかないかは別として(いや、ないのだけど)、同じように抱えていた挫折も違う視点で俯瞰すると、ほんの少しだが余裕を持てるようになった。
「この状況にはまだ何か見えていない背景や、違う選択肢があるんじゃないか」と思うようになった。あげく「失敗しても巨人に喰われるワケじゃないしな」なんて乱暴な意識まで芽生えはじめる始末。実生活に活かせる現実逃避。

同じ頃、遅まきながらSNSの世界にも足を突っ込んだ。
1人でも十分に楽しめたが、作品の解釈や面白さが一気に広がった。たいしたことない頭では辿り着けなかった読み方、解釈がものすごい量で降ってくる。もっと世界を知りたくて、ますます進撃の巨人にハマった。

作品を通してたくさんの進撃ファンとも出会えた。進撃の巨人に出会わなければ、おそらく人生をクロスさせることは一生なかっただろうな、と思うと不思議な気分になる。進撃の世界を一緒に楽しませてもらいながら、作中に出てくる様々な人たちと同じように、日々たくさんの考え方や生き方を見せてくれる。
おかげで自分の思考や選択肢までもが何十倍にも広がり深まった。とても感謝している。

読み始めた頃に辞めたいと思っていた仕事は、気付けば一世一代の大プロジェクトを完遂していた。それどころか趣味が増え、行動力が上がった。

人によって影響を受けるものは様々だと思う。音楽や映画、誰かの生き様や言葉。同じように、進撃の巨人というマンガは自分の人生にたくさんの彩りを与えてくれた。
今でも何かに迷うたび、リヴァイ兵長の言葉「悔いのない方を選べ」と自分に言い聞かせる。

諫山先生、そして関わるすべてのスタッフの皆様、
進撃の巨人 連載10周年おめでとうございます。

進撃の巨人という作品が、人生に影響…と言うか人生の方向すら変える力をもつ出会いとなった人間がここにいます。きっと同じように作品から色々なことを受け取っている人たちがたくさんいるでしょう。
終焉に向かっているのをひしひしと感じるのは淋しくもあるけれど、最後までその世界を、作品の中で必死に生きる人達と一緒に走り抜き見届けたいと思います。
進撃の巨人、最高!出会えてよかった!

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