学びの深化と実践への架け橋:デューイの理論が示す課題解決のアプローチ

レトリカ教採学院、学院長の川上です。 
 
本日も、現代の日本教育において重視されている、主体的・対話的で深い学びや、学習の基盤の一つでもある、問題(課題)発見・解決学習に通ずるお話です。
 


デューイの問題解決学習(問題解決学習法)

教育哲学者ジョン・デューイ(John Dewey)が提唱した学習理論であり、「経験」を通じて思考力を育て、社会生活で役立つ知識とスキルを身につけることを目的としています。
 
この学習法では、以下のプロセスを経て学習者が自らの力で問題解決に至ることを重視します。
 

1. 問題の認識:

まず、学習者が日常生活や社会で直面する問題を自覚する段階です。
 
問題が認識されることで、解決への意欲や探求心が高まります。
 

2. 問題の明確化と仮説の立案:

次に、問題の原因や解決方法について自分なりの仮説を立てます。
 
このプロセスでは、既存の知識や経験を基に、仮説を構築するための柔軟な思考力が求められます。
 

3. 情報収集と検証:

仮説を確かめるために必要な情報やデータを集め、実験や観察を通じて検証します。
 
ここで、批判的思考や調査力が培われます。
 

4. 仮説の検討と修正:

検証を踏まえ、仮説を再評価し、必要に応じて修正するプロセスです。
 
デューイは、この段階を通じて柔軟で批判的な思考力が鍛えられると考えました。
 

5. 結論の導出と応用:

最終的に、問題の解決に向けた結論を導き出し、その解決策が実生活にどのように応用できるかを考えます。
 
この経験が、学習者の今後の問題解決能力に寄与します。
 
デューイの問題解決学習法は、単に知識を覚えるのではなく、現実社会での実践的な課題解決を通じて深い学びを得ることを目指しています。
 
これは「学びは生活そのものである」とするデューイの理念と一致しており、教育の目的を、個人の成長や社会への貢献にあると位置付けた革新的な方法論です。
 
デューイの問題解決学習は、彼の「経験主義」と「Learning by Doing(行動を通じた学習)」という立場と深く結びついています。
 
デューイは、学習を単に知識の受け取りや暗記ではなく、「経験」を通して思考力を鍛え、実践的な知識を獲得するプロセスと捉えました。
 
以下に、デューイの問題解決学習と彼の経験主義およびLearning by Doingの関係を説明します。
 

デューイの問題解決学習と彼の経験主義およびLearning by Doing

1. 経験による学びの基盤

デューイの経験主義は、知識が経験から生まれるという考えに基づいています。
 
学習者が問題を「経験」し、その問題解決に向けて試行錯誤しながら思考する過程で、本物の理解が形成されるとされます。
 
デューイにとって、学習は受動的な過程ではなく、学習者が自らの経験を通じて能動的に知識を形成していくものであり、これが問題解決学習のプロセス全体に反映されています。
 

2. 問題解決とLearning by Doingの関係

問題解決学習では、学習者が実際に行動し、検証を重ねることで、単なる理論知識を超えた実践的な理解を得ます。
 
これは「Learning by Doing」に他なりません。デューイの教育理論では、学習者が仮説を立て、試行し、修正し、最終的に応用するという一連の行動が不可欠であり、この一連の行為そのものがLearning by Doingを体現しています。
 
学習者が行動を通して学ぶことにより、経験が生きた知識へと昇華されるのです。
 

3. 社会生活での適用と実践的知識の重要性

デューイは、教育が社会での実生活に役立つものであるべきと考え、行動を通じて学ぶプロセスが、社会的に有用なスキルや知識の習得に結びつくと主張しました。
 
問題解決学習の各ステップ(問題認識、仮説立案、検証、修正、応用)は、実生活で遭遇する問題を解決するための思考と行動を繰り返すことで、社会的・実践的な能力を育むことを目的としています。
 
このように、デューイの問題解決学習は「経験主義」と「Learning by Doing」の理念に基づき、学習者が自らの行動や体験を通して知識を獲得し、社会で活用できるような知的スキルを養う教育法として展開されています。
 
デューイの「問題解決学習」「経験主義」「Learning by Doing」の考え方は、日本の学校教育が推進する「主体的・対話的で深い学び」における「課題発見・解決学習」に多くの示唆を与えています。
 
現在の日本の教育改革では、児童生徒が自ら課題を発見し、他者との対話を通じて解決策を模索し、実行する力が重視されています。
 
デューイの理論は、これらの学習プロセスの根底にある教育の哲学的基盤を提供し、以下のような示唆をもたらします。
 

学校教育への応用

1. 経験を通じた深い理解の重要性

デューイの「経験主義」によれば、知識は学習者自身の経験を通じて形成されるものであり、受動的な情報の受け取りではなく、実際に体験を通じた深い理解が重要です。
 
日本の「主体的・対話的で深い学び」においても、児童生徒が体験を通して知識を得る機会を増やすことで、学習の深さや定着度が高まります。
 
たとえば、プロジェクト型学習やフィールドワークは、単なる講義よりも実際の社会問題に触れる経験を通じ、学習内容の実感を伴う理解を促進します。
 

2. 主体性と協働の中での問題解決プロセス

デューイの問題解決学習プロセス(問題の認識から解決策の適用までの5段階)は、日本の教育で推進される「課題発見・解決学習」のモデルとほぼ一致します。
 
デューイの理論では、学習者が自ら課題を認識し、仮説を立て、検証し、修正するプロセスが強調されていますが、これにより、児童生徒は自らの主体性を発揮しつつ、他者と協働しながら問題解決に取り組む姿勢が育まれます。
 
日本の学校教育が重視する「対話的学び」においても、対話を通じて多様な視点に触れることで、課題に対する柔軟なアプローチや協力する力が養われます。
 

3. Learning by Doing の実践的学びへの応用

デューイの「Learning by Doing」という考え方は、知識を実際の行動に結びつけることで、現実世界での応用力が高まるとしています。
 
現在の日本の教育では、「主体的・対話的で深い学び」の中で実践的なプロジェクトや課題に取り組む機会を増やし、児童生徒が得た知識やスキルを生活や社会に結びつけることが求められています。
 
たとえば、環境問題の解決策を考えるプロジェクトでは、児童生徒が調査や提案を実行することで、学習内容が単なる理論にとどまらず、社会的価値や実践的な意味を帯びてきます。
 

4. 批判的思考と柔軟性の育成

 デューイの学習プロセスでは、仮説の検証や再評価を通じて、批判的な思考と柔軟な姿勢が求められます。
 
これにより、学習者は一つの正解にこだわらず、状況に応じて考えを修正できる能力を身につけます。
 
日本の教育における「深い学び」も、一面的な知識ではなく、多角的に物事を捉える力や、他者と意見を交わしながら成長する姿勢を大切にしており、デューイのアプローチと共通しています。
 

まとめ

総じて、デューイの教育哲学は、現代の日本教育において重視される「主体的・対話的で深い学び」における「課題発見・解決学習」に対して、実体験を通じた学びの重要性、学習者の主体的な役割、批判的かつ柔軟な思考の育成を強調する重要な示唆を与えています。
 
デューイの学びの原則に沿った教育実践を通じて、児童生徒が社会的に有意義な学習体験を積み、実社会で役立つ知識とスキルを獲得することが期待されます。
 
 
 ではまた!

レトリカ教採学院
学院長
川上貴裕

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