児童虐待防止における意義と教師の責務:法律に基づく詳細な解説
レトリカ教採学院、学院長の川上です。
児童虐待防止法や児童福祉法の改正に伴い、保護者の体罰(身体的虐待)も厳罰化されました。
令和2年から、児童福祉法改正法が施行されても、国際的な調査によれば、日本では、今でもなお、時にはしつけが必要だと、法的には体罰や虐待に当たる行為を肯定する保護者が、まだ半数以上もいるようです。
私も、現在の非常勤講師においても、また、8年ほど前の教師時代においても虐待案件は、減るどころか、増えていると感じることが多いです。
しつけと称して体罰や虐待を受けてきた子が親となり、自分の子も同じように、体罰や虐待をしていく。
この負の連鎖を、断ち切らねばなりません。
しかし、虐待を発見しやすい立場にある教師が、正しく適切な知識持っていなかったり、教職教養をロクに勉強していないために、間違った対応をとってしまい、悪化させたりしてしまう事案も、後を絶ちません。
ということで、
本日は児童(18歳に満たない者を言う)虐待の防止等に関する法律の意義、虐待の定義と4つの種類、そして教師の責務について、詳しく説明していきます。
1. 児童虐待を防止する意義
児童虐待の防止は、社会全体で取り組むべき非常に重要な課題です。児童虐待の防止等に関する法律の第一条では、「児童虐待が児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与える」と定義されており、虐待がもたらす影響が深刻であることが明示されています。
虐待を受けた児童は、身体的な苦痛に加えて、深い心理的な傷を負い、その影響は成人後も続くことが多く、社会生活や人間関係に問題を引き起こすことが指摘されています。
このような児童の健全な成長が損なわれることは、将来的に社会全体に悪影響を与える可能性が高く、社会の安定と発展を阻害する要因となり得ます。
さらに、虐待は児童の自己肯定感や、他者への信頼感を損なうことが多く、こうした悪影響は成人後も克服するのが難しい場合があります。
虐待防止を通じて、児童の基本的な人権を保護し、児童が健全な家庭環境で育ち、成長する権利を守ることは、児童一人ひとりの幸福のためだけでなく、将来の社会を支える重要な基盤づくりでもあります。
そのため、虐待の予防と早期発見は、家庭、学校、地域社会、医療機関、福祉機関など、多くの関係者が一丸となって取り組むべき課題とされており、法律は国や地方公共団体が責任を持って対策を行うことを明示しています。
2. 児童虐待の定義と内容(4つの種類)
児童虐待の防止等に関する法律の第二条では、児童虐待の定義として保護者が行う行為を4つに分類しています。
それぞれの内容について、以下に詳述します。
1. 身体的虐待:
児童の身体に外傷が生じる、またはその恐れがある暴行行為が含まれます。例えば、叩く、蹴る、押し倒すなどの直接的な暴力のほか、冷水をかける、外に締め出すといった行為も該当します。
このような行為は、身体的に傷を負わせるだけでなく、恐怖心を与え、子供の精神的な安定も大きく損なう可能性があります。
2. 性的虐待:
児童にわいせつな行為をする、または児童にわいせつな行為をさせる行為です。
性的虐待は、児童の身体と心に深刻な傷を残す行為であり、自己否定感や羞恥心、恐怖心を植え付け、成長過程において健全な自己像を形成する妨げとなります。
また、こうした被害に遭った児童は、人間関係や性に対する不安定な認識を持ち続ける可能性が高く、成人後の生活にも影響を及ぼす恐れがあります。
3. ネグレクト(養育放棄):
児童の発育に必要な食事を十分に与えない、長時間放置するなど、児童を保護する責務を怠る行為が含まれます。
具体的には、食事を与えない、病気になっても適切な治療を受けさせない、極端な環境に放置するなどが該当します。
ネグレクトは、身体的な影響だけでなく、心理的な不安感や孤独感、自己価値の喪失を引き起こすため、発育過程において重大な問題を引き起こします。
4. 心理的虐待:
児童に対して著しい暴言を浴びせる、冷たい態度で接するなど、児童の心理に深刻な影響を与える言動が含まれます。
また、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力も、児童の目の前で行われることで心理的虐待とみなされます。
こうした心理的虐待は、児童の自尊心や自己肯定感を損ない、情緒の安定に深刻な悪影響を及ぼします。
成人後にも人間関係の構築やストレスへの対処が難しくなるなど、長期的な問題を引き起こす可能性が指摘されています。
以上のように、児童虐待は多岐にわたる形で児童の権利を侵害し、その心身に深刻な影響を及ぼします。
このため、法律では、こうした虐待行為の防止と迅速な対応を求めています。
3. 学校の教員の責務
法律に基づき、学校の教員は、児童虐待の予防や早期発見、通報などの重要な役割を担っています。具体的な責務として、以下の点が挙げられます。
早期発見:
教員は、児童虐待の早期発見に努めるべき立場にあります。
学校は、児童が多くの時間を過ごす場であり、教員は日常的に児童と接することで変化を察知しやすいため、虐待の兆候を早期に発見することが期待されています。
例えば、身体に傷が頻繁に見られる、無表情で不安定な言動を示すなど、虐待の可能性を示すサインを見逃さないよう努める必要があります。
速やかな通告:
教員が虐待の疑いを持った場合には、速やかに福祉事務所や児童相談所に通告する義務があります。
この際、通告内容に基づいて調査や保護措置が取られるため、教員の通告が児童の保護に直結する重要な手段です。
また、教員には守秘義務が課されており、正当な理由なく通告内容を第三者に漏らすことは禁じられています。
児童の安全と福祉のために必要な情報提供が、守秘義務の下で適切に行われるよう配慮されています。
啓発活動と教育:
教員は、児童虐待の防止に関する啓発活動を担う責務も有します。
学校内で児童と保護者に向けて虐待防止に関する知識や心構えを教育し、予防意識を高めるための取り組みが必要です。
例えば、授業や行事などで児童が安全や権利に関する知識を身につけられるように工夫することが挙げられます。
また、保護者に対しても虐待防止の啓発や支援を行い、健全な家庭環境の維持が促進されるよう配慮することが求められます。
研修と資質向上:
法律は、教員が虐待の早期発見や支援に関する知識を深め、適切な対応ができるよう、研修の受講や資質向上の努力を促しています。
児童虐待への対応は、高度な専門知識と判断力を要するため、教員は最新の情報を学び、状況に応じた対応力を身につけることが求められます。
研修を通じて、実際に起こりうるケースに対するシミュレーションや法的な知識の確認が行われ、教員の資質向上が図られます。
以上のように、教員は虐待防止と早期発見、通告、啓発活動、そして自らの専門性の向上を通じて、児童虐待防止の最前線で重要な役割を果たしています。
児童の権利を守り、健やかな成長を支えるため、教員一人ひとりがその責務を理解し、適切に対応することが求められます。
まとめ
正規教師や、教師志望者の中には、教職教養をなおざりにし、教育法規や、通知、ガイドライン、生徒指導提要などをろくに知らないまま、読まないまま、アップデートしないまま、現場に立っている人も見受けられます。
今回の虐待においても、イメージだけで答える教師志望者が、まぁほんとに、多いです。
虐待、体罰、いじめ、不登校、ヤングケアラーなど、子供の心身の健康や生命に係わるような事案に関しては、間違いなく判断し、行動する力が求められます。
これらの事案に関して、面接で正しく答えられない教師は、他でどんなに優れていても、不合格になります。
子供の命や健康の最前線に立つ教師だからこそ、ぜひ、しっかりと、確実に学んで、習得していただきたいと切に願っています。
ではまた!
レトリカ教採学院
学院長
川上貴裕