性行不良による出席停止の現状とその実施が少数にとどまる要因


 
 レトリカ教採学院、学院長の川上です。

出席停止は、全国で、年間でも数件しかないために、見かける機会はまず、ないでしょう。

だから、イメージが先行して、出席停止なるものは、【校長から児童生徒に出席停止を伝える】と思われている人も、いるかもしれません。

しかし、実際は違います。

では、出席停止は、どのような手順になっているのか。

誰が誰に伝えるのか。

どのような場合に、出席停止になるのか。

なぜ、暴力行為はたくさん報告が上がっているのに、出席停止は、全国で、年数件しか行われないのか。

性行不良とは、どういうものなのか。

これらについて、詳細に説明していきます。

 

1. 性行不良による出席停止とは何か?

「性行不良による出席停止」とは、学校教育法第35条に基づく措置であり、特定の児童生徒が反社会的行為や、迷惑行為を繰り返し、他の児童生徒の学習環境を著しく妨害している場合に、教育委員会が、その児童生徒の出席停止を命じる制度です。
 
具体的には、以下のような4つの行為が出席停止の対象として挙げられています。

(1)他の児童生徒に対する傷害や心身の苦痛、財産上の損失を与える行為

他の児童生徒に物理的な暴力を振るったり、精神的に苦痛を与えるいじめ、あるいは他人の所有物を故意に破損・紛失させたりする行為が含まれます。こうした行為は被害者に深刻な影響を与えるため、出席停止の対象となり得ます。
 

(2)職員に対する傷害や心身の苦痛を与える行為

教職員に対して暴力を振るう、または言動によって精神的な苦痛を与える行為が該当します。職員への威圧的な態度や妨害行為も含まれ、教育の場における秩序を著しく乱す行為として対応が求められます。
 

(3)施設や設備の損壊行為

学校の建物や備品、教材などの設備を故意に破壊する行為です。これらの施設や設備は、他の児童生徒が学ぶために必要であり、破損させることは教育環境全体に悪影響を及ぼすため厳重な対応が求められます。
 

(4)授業やその他の教育活動の実施を妨げる行為

授業中に騒いだり、他の児童生徒や教員を妨害したりすることで教育活動の進行を妨げる行為です。このような行為は学習環境の破壊につながり、他の児童生徒の学びの機会を奪うため、出席停止の対象となることがあります。
 

2. 出席停止の具体的な手続き

出席停止の適用には、以下の手続きが義務付けられています:
 

保護者への意見聴取:

教育委員会は、出席停止を命じる前に、児童生徒の保護者の意見を聴取します。
 これは保護者とコミュニケーションを図り、児童生徒の状況や問題行動の背景を十分に理解するための重要な手続きです。
 

文書の交付:

出席停止を命じる場合、教育委員会は保護者に対して出席停止の理由および期間を記載した文書を交付する必要があります。
 
これにより、保護者が処分の内容と理由を理解し、子どもに対する適切な支援ができるようになります。
 

出席停止中の教育支援:

出席停止中も学習機会の提供が義務づけられており、家庭学習用の教材提供や訪問指導などが行われることがあります。
児童生徒の学習権を保障し、学校に戻った後も学習を続けられる体制が整えられています。
 

3. いじめの認知件数、暴力行為の発生件数と出席停止の実施件数の比較


令和5年度の文部科学省の統計によれば、全国の小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数と暴力行為の発生件数は以下のとおりです。
 
いじめの認知件数:732,568件
暴力行為の発生件数:108,987件
出席停止の実施件数:小学校で1件、中学校で5件、合計6件
 
これらを比較すると、いじめや暴力行為は全国で広く認知されているのに対し、出席停止の実施件数は非常に少数にとどまっています。
 

4. 出席停止の実施件数が少ない理由

 
出席停止が少数にとどまる理由は以下の通りです:
 

出席停止が最終手段であるため

出席停止は教育の機会を制限する強力な措置であり、教育委員会はこの措置を慎重に適用します。
 
文部科学省のガイドラインでは、出席停止は最終的な手段として位置づけられており、まずはカウンセリングや学校内の特別支援などによる指導を優先するよう指導されています。
 

教育的支援の優先

問題行動を抱える児童生徒には、教育的支援が優先されます。たとえば、スクールカウンセラーによるカウンセリング、特別支援教室での指導、ソーシャルワーカーの支援が提供されることで、出席停止の必要性が低減されています。
 
文部科学省の「いじめ防止対策推進法」でも、教育的支援が基本方針とされています。
 

複雑な手続き

出席停止の実施には、保護者への意見聴取、文書交付などの厳格な手続きが求められます。
これらの手続きの複雑さが、出席停止を慎重に実施する理由の一つとなっています。
 

教育機関の対応力向上

学校が問題行動の早期発見・早期対応の体制を強化しているため、出席停止をせずとも、校内で問題行動に対応できる場合が増加しています。
文部科学省の「学校における問題行動の予防と対応に関する指針」でも、校内体制の強化が推奨されており、このような対応力の向上が出席停止の件数の低さにつながっています。
 
これらの要因が重なり、出席停止の件数は少数にとどまっています。


まとめ

いかがだったでしょうか。

性行不良がどのような様態を指すのか。
出席停止は、誰が誰に通知するのか。
なぜ、暴力行為の件数と、出席停止の件数が比例しないのか。

お分かりいただけたことと思います。

直接的に、出席停止案件に係わることは、もしかすると、教員生活において、一度もないかもしれません。

しかし、だからといって、学ばなくていいとか、関係ないとか、筆記対策で性行不良の4つを穴埋めできればいいとか、そういうレベルの低い教師には、なっていただきたくないと考えます。

【知識は力なり】ですからね。

今回のブログで、しっかりと、理解しておいていただければ幸いです。


ではまた!

レトリカ教採学院
学院長
川上貴裕


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