自治会DX事例視察④ー北日本放送株式会社編ー
こんにちは!
前回の記事に引き続き、自治会DXの先駆事例視察の結果を報告していきます!
前回の記事はこちらから。
今回、DCDは2024年8月1日(木)、前日の石川視察から場所を変え、富山県の北日本放送株式会社にてヒアリングを実施しました。
北日本放送株式会社さん(以下、北日本放送)は富山県を対象としたテレビ・ラジオ放送局。また、地域ICTプラットフォーム「結ネット」の代理店もつとめており、今回は富山県滑川市で先駆的に導入された有金町内会の常木会長同席のもと、ヒアリングを実施させていただきました。
北日本放送が結ネット代理店となった経緯
北日本放送は、2021年、地域共創の部署立ち上げに伴い、地域貢献できる事業を模索する中で結ネットを見つけ、開発会社である株式会社シーピーユーさんへコンタクトを取ったことが始まりとのこと。結ネットの代理店事業は、テレビ・ラジオ事業とは異なる新たな事業となりますが、地域が抱える課題解決に貢献するため導入を決めたそうです。
アプリ導入への取り組み
導入時の障壁はやはりアプリのインストールやログイン。北日本放送では、結ネットの使い方をよりわかりやすく紹介する動画でのサポートも行っているそうです。他にも、導入予定の自治会に合同説明会の実施をお願いし、積極的なデジタル・デバイド対策を講じていました。他地域で見られた二次元コードによる導入ではなく、担当者が一人ひとりに向き合って導入をサポートする点も特徴的でした。
また、「放送局の強み」という観点では、キャッチーなCMを制作・発信しているのも北日本放送の大きな特徴。
このCMの中では、後述する滑川市有金町内会の常木会長も出演なさっています。地域に根ざし、説明会だけでなく動画やCMなどあらゆる方法でアプリ導入の敷居を下げてゆく。まさに地域密着のメディアだからできることですよね!
ICT活用の次の一手。マゴスピーカー
富山県では、マゴスピーカーという結ネットと連携したIoT機器の実証実験も行っています。マゴスピーカーは3つのボタンと人感センサーを搭載した手のひらサイズの機器で、災害時には音声でお知らせが届きます。
安否確認機能が搭載されており、「無事」や「助けて」のわかりやすいボタンを押して安否を伝えたり、結ネットから発信された文字メッセージを音声メッセージとして受信するだけでなく、助けてボタンを押して、ご自身の声を送ることができます。送信された情報は結ネットで町内会や親族が確認でき、スマホアプリを難しく感じる高齢者を取り残さない優しい設計となっています。
他にも、マゴスピーカーの人感センサーに一定時間検知がない場合に、結ネットを介して地域の見守り担当に通知が飛ぶような機能も搭載されており、町内の高齢者を地域ぐるみで見守ることができます。
現在、マゴスピーカーは富山県中山間地域チャレンジ支援事業における知事特任地区の指定を受け、20世帯に対して実証実験中。
商用化はまだされていませんが、地域共助の先進的な取り組みとして今後も要注目です。
滑川市有金町内会での活用
今回のヒアリングでは、有金町内会の常木会長より、実際の導入時のお話もお伺いさせていただきました。
導入状況・経緯
有金町内会は世帯数81戸、人口221人の滑川市の中の町。導入率は驚異の86%で、2022年8月より導入を開始したそうです。
結ネットを見つけたキッカケは滑川市の広報で見つけたこと。
アプリ導入は、全世帯をまわり導入をお願いするなど、町内会会長の強い牽引力により導入が進められた点が特徴的です。
現在は3日に1回程度、結ネットで発信をしているとのことで、高頻度の情報発信もまた有金町内会の特徴ですね。
能登半島地震での活用
能登半島地震では発災の2分後には安否確認モードへと移行できたとのことで、過去2回の防災訓練で既に発信用の文章ができていたことが迅速な対応に繋がったそうです。
しかし、有金町は津波被害が想定されない地域にもかかわらず、震災時に津波を予見して高台方向へと避難した住民がいたとの知らせがあり、後に結ネットを通して震災時の行動をアンケート調査したとのこと。
安全第一であることは言うまでもないが、避難の必要がない時にまで避難してしまうと、渋滞の発生や予期せぬ二次災害に繋がりかねない懸念があります。
こうした経験からも、町内会でも防災意識を改めて考える契機になったとお話しいただきました。
震災を経て自主防災組織を編成へ!
有金町内会では、能登半島地震や後のアンケート調査を経て、自主防災組織を新たに編成することが決まったそうです。
市や県への申請も終え、有金町内会の新たな防災体制が構築されようとしている段階で、こうした取り組みができるのも結ネットを通して住民の声を集めることができたためだと常木会長は語ってくれました。
地域のデジタル化はきっかけの一つに過ぎませんが、震災を経てそこから防災の強化に繋がっていくとても素晴らしい事例ですよね。
デジタル化とともに地域共創、コミュニティを考えてゆく。
DCDとしても学びの大きいお話でした。
今回の記事はここまで。
ヒアリングにご協力頂いた北日本放送株式会社さん、常木会長、本当にありがとうございました!