見出し画像

月 この施設の障害者は、幸せですか?

あらすじ

“書けなくなった”元・有名作家の堂島洋子(宮沢りえ)は、彼女を“師匠”と呼ぶ夫・昌平(オダギリジョー)とともに慎ましく暮らしている。
そんなある日、洋子は深い森の奥にある重度障害者施設で働き始める。
施設職員の同僚には作家を目指す坪内陽子(二階堂ふみ)や、絵の好きな青年さとくん(磯村勇斗)らがいた。
洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにするが、それを訴えても聞き入れてはもらえない。
そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんであった。
正義感や使命感が彼の中で怒りを伴う形で増幅してゆくなか、ついにその日がやってくる……。
実際の相模原市障害者施設障害者殺傷事件を題材にした辺見庸による同名小説を原作に「茜色に焼かれる」の石井裕也監督が映画化。

感想、解説

予告編では、「相模原市障害者施設障害者殺傷事件」を元にした実録犯罪映画のような印象があったが、いい意味で裏切られた。
事件を起こした植松聖を事件に駆り立てる重度障害者施設の障害者に対する職員や施設の管理者の障害者を人として扱わない勤務態度や虐待そして重度障害者の介護をする職員が無茶な人員配置や勤務体制や給料の安さで職員が心身共に疲れ果てて、障害者に対する暴力の原因になっている劣悪な現実が、施設で働く中で洋子や陽子やさとくんが、心身共に疲れ果てて重度障害者の命の価値観に疑問を持ち始めるやつれ方や苦悩が丁寧に宮沢りえや二階堂ふみや磯村優斗の繊細な演技で丁寧に描かれることで、「優秀で健康的な命の為に、心がない重度障害者など邪魔な命は排除されるべき」という優生思想に基づくさとくんつまりは植松聖の主張に納得しそうな危うい構造に、高齢出産を出産後の新生児の障害を恐れて迷う洋子やなかなか自分の作品が認められない陽子の苦悩を絡めることで、安易に「すべての命は価値がある」と言いきれず他人事ではなく自分の問題として考えると、綺麗事では救えない残酷な現実を突きつけられる衝撃的なヒューマンサスペンス。
洋子と昌平がどんな命でも受け止め育む決意にほのかな希望が見えるラストが秀逸な社会派ヒューマンサスペンス映画。
「人間とは、なんですか?」
U-NEXTなどで配信中。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集