読み手とともに作り上げる、小説「嘘つきたちの幸福」
舞台芸術に造詣が深い、青野晶さんによる、小説「嘘つきたちの幸福」を紹介します。この感想は注意して書いておりますが、それでもネタバレに近づく箇所があります。もし、青野さんの意図した新鮮な驚きを感じたい方は、この記事を読み進めずに、以下のリンクからまずは青野さんの小説をお読みいただき、その後に私の感想記事をお読みください。
あらすじ
感想
青野晶さんは、プロフィールにジャズダンスやバレエ、そしてミュージカルに興味があることを記載しています。この小説「嘘つきたちの幸福」は、青野さんの舞台芸術の学びや、鑑賞を通して得た気づきが反映されていると思われます。
あらすじの注釈では、「実在のバレエダンサーが演じる様子を想像して小説化します」と記載があり、章立ての記述も「第1幕 第1場」と書かれています。この小説は、読者が実際のバレエを鑑賞している体をとりながら、舞台上の華やかなストーリーが進んでいきます。
この、ある意味野心的な、特徴のある設定に基づく小説のためか、地の文では複数の登場人物の心理描写が描かれ、舞台上の様々な演出も重なり、少々読み解くのが難しい箇所があると感じました。
作品の途中に太字で書かれた記述があります。それは、バレエの踊りの名前です。私は、舞台芸術としてのバレエを鑑賞したことはありません。私と同じように、バレエに関する予備知識の無い方は、踊りの名称を調べるとよりその場面の意味を理解し易く感じることでしょう。
終盤に差し掛かる辺りから、青野さんがこのような特殊な文体を用いた意図が明かされます。作品を鑑賞する人がいなくては、舞台芸術は完成しないと言います。その言葉を小説に持ち込むとこのような形になるのか!という新鮮な驚きを感じさせるフィナーレでした。ぜひ多くの人に青野さんの小説「嘘つきたちの幸福」を読んでいただき、私と同じ驚きを感じて欲しいと思います✨️🐶🐳