まほろばVol.4「共に歩み、生きるには」
2023年取材
二次産業の担い手の減少に悩まされる中で、新しいかたちで前に進もうと努力する鉄工所がある。
1人の技能実習生に感銘を受け、帰国後にもう1度働いてほしいと声をかけた。「彼らのハングリー精神には学ぶことばかり」。長野県にある鉄工所の社長は、2014年にインドネシア出身のアフマド(34)さんを技能実習生として受け入れた。「日本人よりもやる気がある」。アフマドさんの仕事に向き合う姿は、今後の会社のあり方を想像させた。
現在(取材当時)は、インドネシア出身の4人とベトナム出身の2人、計6人の外国人材を受け入れる。それぞれが将来の目標をもち、日々仕事に従事している。インドネシア出身のメルビンさん(32)は「お金を稼いで将来は家族のために母国でビジネスをしたい」と話す。ここで技術を学んで、将来に活かしたい。
「困っていることはありますか?」という質問には、宗教上の関係から食べ物に悩んでいると皆が経験を語ってくれた。買い物に行くときは必ず食品表示を見るという。難しい日本語で確認するのに苦労する。全国で進む外国人材受け入れと、彼らの生活へのサポートは充分とはいえない。双方に試行錯誤の日々が積み重なる。
悪質なブローカーや組合が存在し、多くの問題をはらむ技能実習制度や特定技能制度。近年はそれらが廃止、新制度が創設される(2024年)。「日本人だけでは日本をつくっていくことは難しい」。雇用する側として考えることは多くある。社長は今後の会社について、「自分たちだけが儲かろうとするのではなく、共に創り上げていく会社にしたい。」と決意をみせた。
(西澤あかり)