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[ウクライナとつながる深夜の記録]息ができない…ヘルペスを入り口にフリーズした身体と心を解すプロセス

これまではみんなの守秘義務もあるのであまり語ってこなかったけれど、参加している皆さんに許可をいただき、シェアさせてもらうことにした。
私の投稿を読んでくれるみなさんにウクライナの状況のシェアをしたかったし具体的に戦地で生きるということがとてもリアルに感じられる回だったのと、どこであれプロセスワーク的なアプローチが助けになるということが紹介できればという思いで。


ウクライナの人たちのケアミーティング

ウクライナとロシアの戦争が始まってから3年目に突入した現在。今もまだ攻撃が続き不安定な状況だ。
戦争が始まった時、プロセスワークのつながりでウクライナとロシアの仲間に何かできることはないかとコンタクトをとった時に定期的にみんなが集まれる場をホールドして欲しいとリクエストを受け、それ以来定期的にウクライナのみなさんとzoomで集まっている。

みんなと会う時間は時差の関係で日本時間の22時から深夜まで。日本での仕事が終わってから地球の反対側の戦地の人たちと繋がる時間はプロボノであっても私にとってもう一つ大切な仕事だ。

戦地にいる参加者のことを私はよく知らない。プロセスワークを知っている人も知らない人もいるらしいけど、ゆるい繋がりで定期的に色々な先生たちからサポートを受けて集まっているグループらしい。

言葉の壁もある。zoomに書いてある名前の文字も読めない。一人だけ英語が話せる人がいて、その人がざっくりと通訳をしてくれて、私も我流の英語でお互いがんばってコミュニケーションを取っている。

通信状況も良くなくて、ほとんどの人が耳だけ参加だ。そして時間的、状況的にその場に参加できない人もいるので録画させてもらいたいと頼まれ、普段は断っているのだけど特別にOKにして誰がみているのかわからない場をホールドしている。

こんな流動的で曖昧な状況で、何が伝えられるのだろう、こんな我流の英語の私で役に立つのだろうか…と色々と迷うこともあるけれど、とにかく求められているし、外部からの関わりがあることは、「世界から見捨てられていない」という気持ちになるのだという。この時間がいつも楽しみで、長期的に続く紛争の中でどうやってサバイブしたらいいのかのヒントになると言ってくれるので続けさせてもらっている。

プロセスを信頼していつもどおりアドリブで必要なことを提供することにしてる。この活動を始めて改めて、「順序よく講座を提供する、受講することができる」ということは平和な安定した状況ありきなんだなということを痛感している。

最初に戦争が始まった頃の集まりではそれぞれの体験のシェア、気持ちの表現、嘆き、怒り、などのプロセスが多かった。そこの中でもセルフケアができるようなワークを一緒にやってきた。3年目になった今は、参加者には流動性があるけれどどちらかというとセルフケアのニーズもありつつ、今の経験を通して学びと成長を求めて、今の葛藤を乗り越えていきたいという意識に変化していったような印象がある。

「戦争」という日常の中で使えるプロセスワークやセルフケアを

ウクライナのみんなにとっては戦争の状況がリアリティなので、「日常で使えるプロセスワーク」にこだわって伝えている私としては「戦地という日常の中で使えるものを提供しよう」というところだけ軸をもってあとは流動性と柔軟性を活かして波に乗ってグループと共に過ごしてきた。

気に入ってくれて毎回楽しみにして参加してくれる人もいて、私も少しづつ顔を覚えたり雰囲気に慣れたりして日本の深夜にそっとみんなで集まる大切な時間になっている。


爆撃が続いている影響が伝わってくるウクライナの日常

ウクライナの戦争の状況は長く続いていることもありなかなか具体的な話が入ってこないこともあり、私は最近の状況はいつもこのグループで少し聞くことにしている。個人的な話の中からみんなの身近に起きている戦争を感じ取り、胸を痛めている。そして参加者の疑問やニーズ、リクエストなどを集めて役に立ちそうな話をしたりワークを提供している。

今回は最初から戦争の影響を痛感するスタートだった。zoomがつながらないので窓口の人に連絡をすると「今キエフが停電で電気がない(=wifiなどの通信ができない)ので少し待ってて欲しい」とのこと。調べるとロシア軍がウクライナの火力・水力発電所を標的に大規模な攻撃を繰り返し、電力不足の懸念が広がっているとのニュースをみつけた。

zoomがなんとか繋がっても、みんなが入ったり落ちたりする。音声も割れて、質が悪い。いつもは25人−30人くらい集まっているのに、今回は10人もいない小さな集まりだった。
これまでも色々な不都合や状況を間接的に一緒に体験してきたけど、今回の状況はより不安定だった。

特に最初の30分は通訳の人が停電でつながれなくて、他の数名の参加者と「どうしようか…」と片言の英語で迷っていた。すると「ドイツ語話せますか?」と片言のドイツ語が話せる人がいて、しばらくその人とドイツ語を話す時間になった。その時間で少し最近のニュースを教えてもらった時、2週間前にキエフの子供病院が爆撃の標的にされて被害を受けたという話をきいた。ドイツ語はわからないけれど、多分単語で理解したであろう人が「他の町の子供病院も爆撃された」とチャットで教えてくれた。

通訳の人が入ってくれていつも通りのチェックインが始まった。一人が外に出て町の中を歩きながらその恐ろしい爆撃を体験して、「気持ちがフリーズして分厚い壁のようなものを感じている、泣きたくても泣けない。」と語った。「だからこの時間は本当に助けになっている。自分の奥と繋がれる。気持ちとつながって、フリーズしたものが少しとけて呼吸ができる。」と感謝の気持ちを伝えてくれた。彼女のスマホの画面からみえる彼女の辛そうな表情と、その奥に広がる青い空や風が吹いてて木の枝や彼女の髪がなびいている様子のギャップがなんともいえない印象だった。

「ヘルペスができた」「呼吸ができない」…戦争を身体で体験している

別の女性は「爆撃が起きた時、いつもなら家の中にいて静かにおさまるまでじっとしているのだけど、今回だけはそれができずに外に飛び出した。」と語った。ウクライナにはシェルターのようなものがなくて、身をかくまう安全なスペースがないのだという。「その後すぐに唇に複数のヘルペスができて、唇の色が無くなって、まるで死人のようで怖かった。そして呼吸ができなくなってしまった。なにかこういう時にできるエクササイズや知恵はないだろうか。」とリクエストがあった。

また、別の女性も「自分の奥にとても硬くて重いものがあって動かない感じがする。」などと参加者の複数が呼吸ができないこと、体が固まっていること、感情と繋がれないことを口にしていた。

今回は人数も少なかったので、リクエストのあった「ヘルペスが突然でた」「呼吸がうまくできない」という人の身体症状のワークをすることにした。ヘルペスができた時にどんな体験だったのか、どんな対感覚だったのかを聞いてみる。でもやはり思考にいってしまってたくさん説明をしているけれど身体感覚につながりにくそうだ。とてもオープンな感じの人だったので、一緒に「ヘルペスになってみて」もらった。プロセスワークの面白いところは言葉で説明できなくてもイメージや感覚をムーブメント(手や体の動き)を通して表現していく。すると、ふわーっと腕が胸のあたりから外側に広がる動きがでてきた。本人が「なんか、広がっていく。なんか、気持ちがいい!」と笑顔になった。そのままそれを感じてもらい、どんどん広がっていくヘルペスになってもらう。「呼吸ができてる!」と喜びの声。でももう少しゆっくりとじっくりと感じてもらった。どんどん固まっている顎や首、肩や手首、腕や足などを動かしたくなって、その動きにゆっくりと従ったら呼吸も深くなった。
ひと段落して「どうしてこの方法があったのを私はあの時に忘れていたんだろう…」「目が大きくなったみたいだ」と彼女の表情はワークを深める前よりも明るくなり、目も確かに大きく開いていた。ほんの10分程度のワークだったが、彼女はヘルペスを入り口に今彼女の身体が必要としているケアの方法のヒントを受け取れたようだった。

他のみている人たちにもそれぞれに効果があったようで、自分の体の固まっているところに気づいたという人もいれば、一緒にストレッチをしたら呼吸ができるようになったという人もいた。一人が身体感覚と繋がって深めてくれると、場全体にも影響するといいな、と思って一人の人を深めたのはプロセスの方向性は合っていたようだ。よかった。

ハートにつながる時間

あっという間に時間がきて、最後にハートにつながる瞑想を分かち合った。広く青い空になり、そこに流れてくる様々な雲(思考や感情)、内側で起きていることをジャッジせずに眺めながら流していく。最初に見せてもらった、ウクライナの青い空を思いながらそれをすることにした。

「この最後のワークはどこにたどり着けばいいのか?」という質問があった。これまでは自分でできるワークなどを紹介していたから瞑想のような内観は初めてだったようだ。「どこにも辿り着かない時間です。」と伝えた。「なんらかの価値もなく、意味もなく、答えもない。そういうスペースを1日1分でいいから作ってみてもらいたいのです。」と。
「そんなことしたことない…やってみます。」とウクライナの空を見せてくれた彼女はいった。そういえば、彼女は最初の頃「どうして日本の人たちは戦争や震災などをすごいスピードで克服できてしまうのか知りたい。」と言っている人だった。その問いに対しては色々と思うことがあるけれど、彼女の目には日本の人たちがそのように映っているのだろう。そういう意味でも今日なんとなく紹介した1分瞑想は役に立つのかもしれない。

夏休みがあり次回の集まりまで少し時間が空いてしまう。それぞれがそれぞれのケアができるようにという願いをこめて。

戦争という激しい葛藤と緊張の中で日常を生きている人たちに想いを寄せると私の体もなんとなく緊張する。いつもこの集まりの後は数時間眠れないのだ。1日も早く、少しでも平和な瞬間が訪れますように。


今日のみなさんの話を元にちょっとだけ調べた子供病院への爆撃情報はこちら:

約2週間前の2024年7月8日、ロシアがウクライナのキエフを含む複数の都市に大規模なミサイル攻撃を行い、キエフのオフマディット子供病院が深刻な被害を受けました。この攻撃により少なくとも41人の民間人が死亡し、その中には子供3人も含まれていました。また、170人以上が負傷しました​ (Military Benefits)​​ (Yahoo News - Latest News & Headlines)​​ (Wikipedia)​。

2024年7月8日のロシアによるウクライナへのミサイル攻撃で、複数の都市の子供病院が攻撃されました。キエフのオフマディット子供病院が特に大きな被害を受けた一方、他の都市でも子供病院が攻撃対象となりました。

以下の都市にある子供病院が攻撃を受けています:キエフ(Kyiv) - オフマディット子供病院。ここでは大規模な損壊が発生し、2人の成人が死亡し、多くの子供を含む16人が負傷しました​ (Human Rights Watch)​​ (Wikipedia)​。
ドニプロ(Dnipro) - 子供病院も攻撃の対象となり、多くの負傷者が出ました​ (Human Rights Watch)​。
クルィヴィー・リフ(Kryvyi Rih) - ここでも子供病院が攻撃を受け、被害が報告されています​ (Human Rights Watch)​。


これらの攻撃はウクライナ全土にわたって行われ、キエフを含むいくつかの主要都市で特に甚大な被害が報告されました。国際社会はこれらの攻撃を強く非難しており、戦争犯罪として調査する必要があるとされています​ (Human Rights Watch)​​ (Wikipedia)​。

Dayaのプロセスワークに興味を持たれた方へ

プロセスワークに興味を持った方はぜひ体験してみてください。体感を通してのみ、理解ができる部分があります。
現在公開されている年内の対面ワークショップの企画はジェンダー、セクシュアリティをテーマにしたものが多いです。シンプルにプロセスワークを体験したい方は個人セッションもオススメです。

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●7/27土・7/28日 2days!!
LGBTQ+フレンドリーであれば皆歓迎◎
「LGBTQ+&アライがより繋がっていくために、分かち合いたい!Dayaのプロセスワーク入門講座」


<9月の企画>
当事者と支援者のガチな合宿!本当に変えていくために、本当の話をしましょう。
●9/14土-9/15日 1泊2日合宿!!
LGBTQ+当事者&家族、現場のある支援者(アライ)限定◎「LGBTQ+と現場に立つアライに贈る『ディープデモクラシーへの扉@大阪』 2024 〜「葛藤・つながれなさ」の先へ 〜」


<10月の企画>
ジェンダー、セクシュアリティは誰もが当事者のテーマ。どなたでも参加できます!
\10/12(土)~10/14(月・祝) 募集中!★/
ワールドワーク合宿2024
〜葛藤・対立を変容させていくための対話促進アプローチ〜「ジェンダー・セクシュアリティ」をめぐる様々な声


Dayaの個人セッション(大阪)のご案内
7月25日(木)午後〜夕方
に大阪でDayaの対面での個人セッション(90分)を提供します。関西方面の方には、貴重な機会だと思うので、必要だと感じた方はぜひ体験してみてください。

Dayaの個人セッションってなんだろう?って思った方は感想を書いてくださったのでこの記事を参考にどうぞ。

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通常の継続的なトレーニングや単発の個人セッション、お仕事の依頼などもこちらの連絡先からお問い合わせください。
processwork.daya★gmail.com
(★を@に変える)


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