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組織能力

従業員の活動を通じた競争優位の実現

戦略的人的資源管理は、企業の目標達成に向けた人的資源管理の配置の計画とその管理活動に関する戦略的適合的なパターンのことを言います。戦略と人事施策を適合し、かつ個々の人事施策もそれぞれ適合的であることが必要です。その基本的な考え方は、人的資源、そして人的資源管理が戦略と適合することによって組織業績が最大化していくというものでした。

本節では、人的資源管理が戦略と適合的であることの意義を、「人的資源管理と持続的競争優位」という点から、もう一度整理します。

人的資源管理と競争優位

まず、競争優位という言葉を整理します。競争優位とは、その企業の行動が業界や市場で経済的価値を創出し、かつ同様の行動をとっている企業がほとんど存在しない場合に、その企業が置かれる位置です。競争優位のある企業は、他者との競争を有利な立場で展開することができます。したがって、高収益を実現できる可能性が極めて高いです。

では、人的資源管理と競争優位はどのような関係にあるのでしょうか。人的資源管理は、企業が保有する経営資源の一つです。人的資源は、物的資源や財務的資源、情報的資源といった他の経営資源を用いて経済的な価値をもつ製品を指します。この点で、人的資源は経済的に価値の高い経営資源です。

より本質的な特徴として、人的資源の柔軟で潜在的なポテンシャルが挙げられます。これは、ヒトが学習し成長する主体であるものから導かれるものです。技術・製品は、時代が経つにつれて古くなるため、価値の低下が見られます。その分、人的資源は新たなことを学習することができるため、他の経営資源よりも柔軟性が高いと言えるでしょう。

人的資源管理と持続的競争優位

従業員は、価値のある製品・サービスを生み出し、しかも知識やスキルを用いて創造性に富んだ活動を提供することによって、製品・サービスに新たな価値を付け加えていくことができます。しかし、従業員が学習によって知識やスキルを蓄積し、また能力を発揮できなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。

従業員は、組織から役割を与えられ組織メンバーとしてその役割を果たす中で、学習し自己成長していきます。つまり、人的資源が生み出す知識は、組織で割り当てられた業務を遂行する中で蓄積されていきます。

企業が競争優位を実現するためには、従業員を動機づけて学習を促す組織的なマネジメントが重要となります。また、競争優位を持続させていくためには、組織活動自体を絶えず活性化させていかなければなりません。採用、育成、選抜といった人的資源管理の諸施策は、まさにこのような組織マネジメントに関わってきます。

人的資源管理は、従業員の能力を最大限に活用し、企業に対する貢献をうまく引き出すための従業員の管理活動です。それと同時に人的資源管理は、競争優位を構築すべく、戦略を迅速かつ着実に実行できる体系的なシステムであることが重要です。およそどんな組織マネジメントにおいても、戦略を無視した管理活動というものはあり得ません。人的資源管理も組織マネジメントの一つである以上、戦略的人的資源管理で戦略と人的資源管理の対応を強調されることについては多くの人が納得できるのではないでしょうか。

しかし、戦略に適合した人的資源管理でなければならないといっても、そう簡単ではありません。戦略と人的資源管理がどのように、あるいはどの程度対応していれば、戦略と人的資源管理が適合していると言えるでしょうか。私たちは、企業の組織活動の中で戦略が実行されかつ新たに創造されていくプロセスを見て初めて、その企業の戦略について判断することができます。

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