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モルダヴィアの古都ヤシへ(2)

表紙写真: ヤシ市内(ルーマニア・ヤシ、2024年6月筆者撮影)

2日目は早朝に起きて、ルセの中心部を散策した。しかし、都市の構造がよく分からず、意図せず広場と反対方向に行ってしまった。路上であったおじさんと空手の話をして一旦ホテルに帰って今度は車で中心部に向かう。

ルセの中心部はドナウ川沿いに下ってきたドイツ人が築いた街であり、ヨーロッパの主要都市のように碁盤の目状に街区が区切られている。街区には立派なドイツ風の建物(過去に南ドイツを訪れた時の印象に比べると、ルセの方が若干シンプルなデザインの印象、やはり本国から遠いからか。)が立ち並んでいるという感じだ。しかし、その中心部の周りにはソ連時代の集合住宅が無秩序に広がっているので、何だかあべこべな印象の街である。

次の目的地ヤシはルーマニア北部、モルドバやウクライナとの国境近くなので休憩なしで片道8時間かかる。ヤシはルーマニアの北部の地方都市の様に見えて、実はルーマニア第2の都市でもある。ヤシでは通勤・帰宅ラッシュも激しそうなので、ルセの美術館の見学は諦めて早々にヤシへと向かって出発する。広場で掃除をしてるおばちゃんはトルコ人だった。(トルコ語話してた。)

ルセ市内の住宅街を抜けて、市の東側にあるルーマニア・ブルガリア友好橋を目指す。ドナウ川沿いにはパイプラインなども敷設されている。

2024年6月現在、ブルガリアとルーマニア間の陸上交通にはEUのシェンゲン協定が適用されるため、両国間を越境する場合でも出入国検査は必要ない。ブルガリア側で橋の通行税2ユーロを支払い、いよいよ渡橋である。ルーマニア・ブルガリア友好橋は片側1車線で鉄骨橋である。対向車線からは大型のトラックも来るのであまりよそ見をする余裕はないが、横目で見やったドナウ川はやはり大きな川であった。千葉と茨城県境の利根川大橋の2倍以上はあった印象だ。河川の国境越えというのは初めてであったが、日本に近いところでいうと中国と北朝鮮の間の鴨緑江を渡る中朝友誼橋というのもこんな感じなのだろう。

ルーマニア側に渡ると、古くて簡素な国境ゲートに到着した。目的地と宿泊先のみ確認されて、あっという間に入国。シェンゲン協定加盟国間の移動なので、日本国籍者に対しても入国スタンプは押されなかった。国境でルーマニアの通貨レイ(Lei)に両替しようとしたが、トルコリラは対応してなかった。ブルガリアだとトルコリラでも両替できたが、ルーマニアまで来るとトルコとの経済的な結びつきはやや疎遠になるようだ。

この辺りはジョルジュ(Giurgiu)という場所、とりあえず首都ブカレスト方面に北進する。ジョルジュと首都ブカレストを結ぶ高速道路はかなりまっすぐだ。これがワラキア平原かという感慨に浸りながら運転していると、ロータリー式の交差点が多くなってきた。ブルガリアにもこういった交差点はあったが、ルーマニアの方が多い印象である。ブカレスト東郊から市街地を抜けながらE85番線に入り、北へ北へ。

ルーマニアの自動車道ルールはブルガリアともちょっと違う。白線基準
だと日本人としては片側2車線に見えるのだが、右側車線の更に右側を走る車が多数いる。しかし、その「車線」の右側には白線による仕切りがなく、砂利や畑になっているので、右の車輪を数十cm右に踏み外すと落ちてしまう。追越してもらうために右に寄っているのは明らかだが、みんな車の左側が1-1.5mくらい左側の車線にはみ出しているのでなかなか追越ににくい。結局ルーマニアを出国するまで、この交通慣行の意味合いは分からなかった…

ブザウ(Buzau)、バカウ(Bacau)といった町を抜けて北へ。途中で少し現代的な高速道路が整備されていた区画もあったが、大半は都市間の国道が高速道路代わりである。トランシルヴァニア山脈の東郊の平原を進むと、少し森林や沼沢がある地域を通過する。沼沢は絵画のように美しかった。ヤシの街が近くなってくると真っ平な平原の道路上に大木が並木を作っており、モルダヴィア地方(露:モルドバ)にやってきたという実感が湧いてきた。

ヤシの街の手前でガソリンスタンドに駐車すると、目の前の車はウクライナナンバーのバンであった。ウクライナ人男性のウクライナからの出国は禁止されているから、子どもや女性たちがこういった中小型バンに乗って、国境越えの避難をしてきたと推測された。

ヤシの街まで残り40分くらいのところで渋滞に捕まった。国道とルーマニア国鉄の交差点が混むらしく、対向車線からは農作業の馬車もとことこやってくる。ヤシの人口は40万人ほどで、ルーマニア第二の規模の都市であるとのこと。市内に入ると、旧ソ連時代のものと思われるが、大通り沿いにマンションがずっと軒を連ね、大きい都市であるということを感じさせる。

やっと宿泊先のホテル・ヤシに到着した。中央広場のすぐ横にあるホテルである。長距離運転に加えて、さすがにヤシまで来ると、未知の土地に一人でやってきた感が強い。近くのルーマニア料理レストランBolta Receで食事を取る。ルーマニアでは鯉の養殖が盛んということで注文してみたが、淡白すぎてやや面白くなかった印象。食事中に伝統音楽の生演奏をしてくれる人たちもいて、面白かった。

ルーマニア料理店Bolta Rece, 鯉のフライなどを注文

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