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「好きな仕事で輝く」 ドイツのマイスター制度で広がる働き方の可能性(代表インタビュー後編)
日本の若者に「好きな仕事でプロになる」という新しいキャリアの選択肢を届けるために、ダヴィンチインターナショナルを設立して12年。
代表の松居温子と高野哲雄は、ドイツの「ゲゼレ・マイスター制度(デュアルシステム)」を活用し、これまで多くの挑戦者が夢を叶えるサポートを続けてきました。
インタビュー前編では、二人が会社を設立した背景や、日本ではまだ馴染みの薄いゲゼレ・マイスター制度(デュアルシステム)を通じた職業教育の可能性についてお話を伺いました。
後編では、昨年ドイツに設立した現地法人の役割や、それによって広がる支援の強化、そして2025年以降に見据えるさらなる展望について、語っていただきます。
現地法人設立で、さらに広がるドイツ留学の可能性
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──2024年にドイツで現地法人を設立しましたね。
松居:はい。これまでは「日本の会社がドイツに拠点を持っている」という形でしたが、現地法人化することで、ドイツでの信用力が格段に向上しました。現地の企業や、商工会議所、教育機関との連携もスムーズになり、今まで以上に多様な支援が可能になりました。
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── 現地法人化によって、何か変化はありましたか?
松居:企業としての変化は、「雇用の安定性」を確保できたことですね。これまではドイツの事務所という形だったため、現地での雇用も業務委託に近い形だったのですが、法人化することで、社会保険制度を完備した雇用が可能になり、従業員が安心して働ける環境を作ることができるようになりました。
高野:もう一つの変化は、受け皿の拡大です。もともとゲゼレ・マイスター制度(デュアルシステム)を活用した職業留学の支援が中心でしたが、近年、「ドイツで働きたい」「移住したい」というニーズが急増しています。特に家族移住を希望する人々のサポートが求められるようになり、より柔軟な支援体制の構築が必要になりました。
また、新たな柱として、医療分野の支援強化があります。これまでもドイツの医療系メディカル企業と提携して看護師や医師の免許書換えサポートを行ってきましたが、今回、ドイツ法人設立に伴い、医療系メディカル企業と正式な独占契約を締結しました。
日本の看護師や医師などの医療系の免許を持っている方が、ドイツで免許を書き換え、安定したキャリアを築くためのサポート体制をより強固に整えることができました。
医療分野の支援強化と新たなキャリアの選択肢
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── 日本の看護師や医師の方々が、ドイツで資格を書き換えることにはどんなメリットがありますか?
松居:特に看護師さんにメリットを感じていただけると思います。日本の看護師は過重労働や人間関係のストレスが大きく、医師との上下関係や患者対応の負担も多いですが、ドイツでは看護師の役割が明確に分かれていて、医師からも患者さんからも正当に尊重される立場にあります。
例えば、日本では医師の指示に従わなければならない、患者さんの看護師への要望も強いという場面が多いですが、ドイツでは「これは医師の仕事だから」ときっぱり線引きがされています。そのため、不要な業務の負担が少なく、自分の職務に集中できる環境が整っています。
高野:さらに、給与や労働環境の良さも魅力です。ドイツでは、語学要件(B1レベルのドイツ語)が満たされれば、研修期間中も給与を受け取りながら免許の書き換えが可能です(弊社のプログラムに限る)。
看護師の場合は、研修期間中でも 月2,700ユーロ(約45万円) の給与が支給され、資格を取得すると 月3,300ユーロ(約55万円) まで上がります。そして、昇給の仕組みが制度として明確に決められているので、個人の評価や人間関係に左右されることなく、着実にキャリアアップしていくことができます。
松居:また、休暇がしっかり取れることも大きいです。ドイツでは、有給休暇が100%消化されるのが当たり前で、夏休みは家族で数週間のバカンスを取る文化があります。働き方とプライベートの時間のバランスが取れている点は、日本との大きな違いですね。
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── 日本の医療従事者が、ドイツで資格を取得するハードルは高いのでしょうか?
松居:これまでは、ビザの問題が一つの大きな壁でした。日本で看護師免許や医師免許を取得しても、ドイツでその資格を正式に書き換えるまでの期間にビザが切れてしまい、途中で諦めるケースが多かったんです。
でも、今回の独占契約により、語学の準備から資格取得、就職までを一貫してサポートできる体制が整いました。それでもその手続きの工程は簡単ではありませんので、個人で行うのはドイツ人と結婚する等の特別な環境がある人以外は今でも大変です。
── 現地法人設立によって、支援の幅が大きく広がったんですね。
松居:そうですね。法人化したことで、今後さらに受け入れの幅を広げていくことが可能になりました。医療分野に限らず、他の職種でも「ドイツで安定したキャリアを築きたい」という方々を支援するために、関係各所との連携を深めながら支援の幅を広げていきたいと考えています。
2025年、さらに広げたいゲゼレ・マイスター制度(デュアルシステム)の可能性
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── 2025年以降の展望について教えてください。
松居:日本ではまだ、ゲゼレ・マイスター制度(デュアルシステム)やドイツの職業教育、働き方についての情報が十分に広まっていません。
特に「海外で手に職をつける」「先進国で安定して就職し永住権を取得できる」という選択肢を知らない人が多いんです。2025年は、そうした選択肢をより多くの日本の若者に知ってもらうために、情報発信を強化していきたいですね。
高野:SNSやYouTubeの発信を続けるのはもちろんですが、よりリアルな体験談を届けることに力を入れたいです。実際にドイツでプロフェッショナルになった日本人が、どのようにキャリアを築いたのか、その過程を伝えることで「自分にもできるかも!」と思える人を増やしたいですね。
松居:その一環として、2025年には本を出版する予定です。これは、ドイツ人の時間の使い方が日本人にとっての幸福な時間の最大化のためにどう役立つのかを伝える内容で、「時間の使い方=幸福な時間の最大化」という視点を広めるものになります。本を通じて、仕事と自由時間のバランスの取り方を考えるきっかけを提供したいですね。
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── ドイツの働き方で、日本に取り入れられるものはありますか?
松居:ドイツでは、一度就職しても「別の道に転向する」ことが非常にスムーズにできるんです。
例えば、タクシー運転手から鉄道運転手へ転職するための再訓練制度があり、半年間の研修で新しい仕事に就くことができたり、それ以外にも再訓練により、職業を変更する選択肢が豊富にあります。
高野:日本では「最初に選んだ仕事を一生続ける」ことが前提の社会ですが、ドイツでは「自分に合った仕事を見つけていく」ことが大切にされています。
ゲゼレ・マイスター制度(デュアルシステム)を活用すれば、特定の職種でスペシャリストになった後も、さらに別のキャリアへ進む道が開けるんです。
松居:ドイツには「個人のスキルを生かすための仕組み」が整っているので、実際に一度家庭の環境で、医師を目指した人が、今は大好きなパン職人のゲゼレを取得中という方から、「職業の転向をしてとても幸せだ」という話を聞いたこともあります。
こうした「柔軟なキャリア形成」の仕組みと、どんな職業に就いてもその個人の職業の選択を尊重する気運が日本でももっと広がるといいなと思います。
「好きな仕事で輝く」それが人生を豊かにする
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──これから就職や転職を目指す、日本の若者へ伝えたいことはありますか?
松居:「好きなことを仕事にする」ことを、もっと気軽に考えてほしいです。日本では「安定=大企業」「仕事=我慢するもの」という価値観がまだまだ強いですが、実は「好きなことを続けてプロになること」が、長期的に見ても最も安定したキャリアにつながるんです。
高野:私たちが支援しているのは、単にドイツで働く機会を提供することではなく、「人生の選択肢を広げること」なんです。自分の好きなことを仕事にしたいのに、「安定を考えると難しい」「日本ではなかなか道がない」と諦めてしまう人が多い。
ドイツのマイスター制度は、手に職をつけ、確かなキャリアを築きながら、新しい環境で自分の可能性を試すことができます。もし、好きなことを仕事にしたい、海外でチャレンジしたいと思うなら、ぜひ一度相談してほしいですね。
ドイツで国家資格を取得し、永住権を得た後はドイツやEUで活躍するのは当たり前の時代です。もちろん、日本での活躍も十分に実現可能です。ドイツでのチャレンジは日本の地方創生にもつながります。
地元に帰って起業したり、日本の企業に新しい風を吹き込むことで地域経済の活性化を促し、日本を元気にすることも選択肢の一つです。とにかく若者が将来の選択肢を増やすきっかけにして欲しいと思います。
松居:特に日本の若者には、「仕事=人生を犠牲にするもの」という固定観念を持たずにいてほしいです。ドイツでは、仕事は「自分にとって楽しいことを職業にすること」として捉えられています。その考え方を取り入れるだけでも、キャリアの選び方が変わってくると思います。
おわりに
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ダヴィンチインターナショナルが目指すのは、「好きな仕事でプロになる」ことを当たり前にする世界。ドイツのゲゼレ・マイスター制度(デュアルシステム)は、その大きな一歩となる仕組みです。
「やりたいことを仕事にする」というのは、決して夢物語ではありません。単なるキャリアの選択肢のひとつであり、努力次第で手に入れられる未来です。
「好きな仕事で輝きたい」と思うすべての人に、新しい選択肢を届けるために!
これからも、松居と高野の挑戦は続きます。
好きな仕事で輝くためのドイツ留学
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インタビュー・文 峯丸ともか(ライター)