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ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編

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地図を片手に、主人公と一緒に北海道を旅してみませんか?  旅行記のようで、推理小説のようで、ひと夏の恋物語のような、不思議な話。
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#連載小説

ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 プロローグ【上陸編】

ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 プロローグ【上陸編】

 すべてを綺麗にした。
 自由を手に入れる為に、多少の不自由を背負込んだ俺は、やっと、長い、長い、長い旅に出た。

 ひ弱なライトが作り出す、ニヤけるほどに“おぼこい”光源と、それによって生み出されてゆく暗闇、標示板の灯りだけを頼りに、ぼんやりとしたオレンジ色が染める辺りを目指す。
 
 今夜乗る船と対面してみれば、逸る気持ちがどれだけそそり立つのだろうかと思っていたが、なぜだか冷めていた。
 喰

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ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 2

ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 2

 カーテンを開けっぱなしで寝入り、明るさで目覚めるのは、全てを綺麗にしてから始めたことだった。
 時計を見るとまだ5時にもなっていなかった。北の大地の夜明けは早いのだった。
 もう眠れそうになかったので、シャワーを浴びて、昨夜考えたルートをチェックした。昨日感動した景色を写真に収めていなかったことを思い出し、二十二間道路の桜並木のあと山間部を通ってあの景色をもう一度見に行こうと決めた。
 今日もい

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ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 3

ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 3

 海から昇る朝日に起こされたのは、漁業利権関係の拗れで和歌山の太子町に乗り込んだ時以来だった。いつまで朝の光で目覚めることが出来るのかはわからない。有難く、今日の訪れを受け入れる。
 昨夜の晩飯は期待を裏切る豪勢さで、海鮮以外にも熊肉の鍋もあって美味かった。それに釣られて、仲居さんに「大丈夫ですか?」と尋ねられるほど地酒を堪能した。
 ぐっすりと眠れたお陰か、今朝は随分と調子が良いようだ。
 PC

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ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 4

ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 4

 目が覚めるとテレビが点いていた。
 灰色の窓の向こうでは雨が降っている。
 テレビの画面の右上にある時刻は、六時四十七分。この頃、あの時の夢を見ないなぁと思った。
 ベッドのサイドボードには、缶ビールが置いてあった。寝転んだまま持ち上げると、三分の一ほど残っている。思った以上に疲労が蓄積していたようだ、気絶するように眠ったらしい。
 昨日、宿に着いた時には、明日は一日中寝っぱなしになるだろうと考

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ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 5

ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 5

 彼女は酎レモンを一口飲んでから話し始めた。
 「わたしが生まれたのは、神奈川県横浜市青葉区ってところで、小四までそこで育ちました。小さいけどお庭があって、わたし専用のブランコがあって。近くにこどもの国っていう遊園地もあって、子供ながらに幸せだなぁなんて、生意気に思ったりしてました。知ってますか?こどもの国」
 酔いが回って口調も明るくなってきた。これが彼女の本質だろうか?横浜生まれの横浜育ち、話

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ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 6

ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編 6

 「ちょっと待って下さい。急いで服を着ますから」
 今の俺に、拒絶しなければならない訳も、拒絶するすべもなかった。だが、嘘を吐いて時間稼ぎをしたのは、この部屋の匂いだけは入れ替えたかったからだった。だって、彼女との残り香は、二人だけのものだから。
 ペットボトルを屑籠へ入れ、真っすぐ下へと落ちる雨筋が見える部屋の窓を、開くだけ目一杯に開けた。僅かに開いた隙間から、湿った朝の帯広の空気がそよりと流れ

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