ブーバー 我と汝

まさに「秩序ある世界と世界秩序とは違う」ということである。われわれは、どういうわけか分らないけれど、とにかく眼前に世界秩序の完全におこなわれている様を目撃するような深い沈黙の瞬間が存在することを知っている。こうした瞬間には、「世界秩序」のかなでる美しい楽の音が諸君の耳に伝わってくるであろう。
これにくらべるならば、「秩序ある世界」とは、「世界秩序」の音楽の出来の悪い楽譜スコアみたいなものなのである。さて、こうした世界秩序の深い沈黙の瞬間は、永遠不滅であり、しかも同時にもっともうつろいやすい。また、われわれ人間はそこからなんの内容もつかみとることができないが、しかし、こうした瞬間の持つ力は、人間の創造活動と認識作用に入りこみ、またその光は、既成の秩序ある世界に流れこんで、それを再三再四あらたなものに作りかえてゆく。これは個人の歴史においても、また民族の歴史においても同じことなのである。

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ダビデの詩
わ〜い!😄