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バフチン 生誕の災厄 (出口裕弘さん訳) 追記
あの男には才能がない、あるのは口調だけだなどと人は言う。だがその口調こそは、案出し得ないもの、その人間生来のものであり、血筋として受け継いだ魅力、自分の生理的拍動を人に感じ取らせる特技とでも見るべきものだ。口調とは才能以上のもの、才能の真髄である。
一度ならず私は、部屋にじっとしていると、ある種の唐突な決断に逆らいかねるような気がして、家を飛び出すことがあった。
街路は部屋よりも安全だ。なぜなら人間は、街路ではあまり自分のことを考えないし、第一、そこでは何もかも、精神錯乱すら強度を落とし、品質を落としているのだから。
祈りの才能を持つ人々を嫉妬しようとはせず、財産の所有者、富と栄光を知った人々に対しては総身のねたみを向ける。ある人間が永遠の至福にあずかるかもしれないのに、それには素知らぬ顔をし、一方、束の間の成功には心穏やかでない。奇妙な話である。
借り物の国語を用いる上で、もっとも具合の悪いことは、ふんだんに語法上の間違いを犯す権利がないということである。あえて不正確を求め、しかもそれを濫用せず、たえず文法上の誤りを掠めながら行くこと、そうしてはじめて、書いたものに生命感を与えることができるはずなのだ。
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