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Day0 旅、ふたたび。

昨年11月から2月末に実施した放浪から約3ヶ月のインターバルを経て旅が始まる。今回は欧州全域をバスで横断。安全上の懸念からウクライナとロシアは回避するが、ともすれば気楽な周遊になりかねないオンシーズンのヨーロッパ。21-22時程度まで明るい時間帯が続くと言われるこの時期は宿やレストランなど、全般的に費用の嵩む時期ゆえに横断は多額の費用がかかるのは重々承知だが、逆に言えば最も効率よく一日の時間を使うことができる上に、天候が非常に良い。

今回の旅行では先天性赤緑色覚異常をもつ自分の当事者研究として色彩への知見を深めることが一つの大そしてテーマだ。風景や絵画などを中心に、色に纏わることに想いを巡らすような時間を過ごそうと思う。特にイタリアの色彩はあのウィリアム・ターナー氏が印象派の先駆となる色彩豊かな抽象画を描くきっかけになった場として有名で、今回わたしもイタリアの各都市を回ることにしている。

またアウトサイダーアートとの触れ合いをもう一つのテーマに設定した。今回は山下清のヨーロッパぶらりぶらりと言う書籍を旅のお供にする。そしてフランスのリヨン郊外にあるシュヴァルの理想宮にも足を運ぶ予定である。シュヴァルという郵便局員の男性が、不思議な石に躓いたことをきっかけに30余年に及ぶ石積みの制作を経て、奇妙な美しさを放つ宮殿をたった一人で建立した。シュルレアリズムを宣言したアンドレ・ブルトンやかの有名なパブロ・ピカソなども訪問したことがある場所だ。山下清は言うまでもないが、「お、おにぎりが食べたいんだなあ」で有名なあの方。驚異的な記憶能力と色彩豊かな描画力で知られる彼の40日間にわたる欧州放浪記。この本には赤瀬川原平のあとがきが添えられており、非常に興味深い本として急遽購入した。移動時間にゆっくり読み進めてみようと思う

また、欧州の近代史にも強い関心を寄せている。100年前の記録映像がAI補正によって無数にカラー化、フレーム補完されアップロードされる今日、その惨憺と悲壮は現在各地で激化する戦闘と何一つ変わらぬことを証明している。サラエボやクラコフなどに足を運び、過去の歴史に肉薄することによって、画面越しに深めた見聞をより詳細に理解したいと言う欲求が兼ねてよりあった。

さらに今回はCHATGPT4oをサブスク課金し、旅程における助言や整理、また旅先で見つけたあらゆる対象物の補足などをしてもらうことで、各地の対象物をより詳細に認識・理解できるかどうか試みる。一人旅においては非常に助かるテクノロジーであり、人工知能との共存を具体的な形で試行するという一つの実験である。

セコム兄貴は休眠中。

もちろんベネチアビエンナーレなどの大規模展示なども鑑賞し、こうした国際情勢の中で欧州をはじめとした世界各国のアーティストがどのようなアプローチを以てコミットしているのかを確かめることにも非常に興味がある。音楽、美術、その他歴史文化を広く見聞し、感性を養うインプットを積極的に行っていきたい。

ここまでを前段とし、以下より具体的なルートについて説明を行いたい。
まず6/18 午前8時に成田を出発したのち、シンガポール・チャンギ国際空港でトランジット滞在を経て、アテネ国際空港へ向かう。現地到着は翌日19日の午前7時、空港からアテネ中心市街地へ向かい昼食と軽散策をしたあと、ピレウスに移動しフェリーに乗船、そこからさらに6時間ほどエーゲ海に揺られ、同日22時にサントリーニ・ティラ港に到着する。23時に中心街フィラにある宿に辿り着く予定だ。移動に移動を重ねる多動症にはもってこいな滑り出しである。
その後サントリーニに3泊したのち、アテネに戻り、その後はFlixbusを利用し東欧諸国を点々としながら北上する。旧ユーゴスラビア諸国を跨ぎながら中央ヨーロッパ諸国を周り、そのままバルト三国を経てフィンランド、スコットランドなど北欧諸国を巡る。そこから南下しデンマーク経由でドイツ・ベルリンに。数日滞在してからさらに南へ移動しスイス・ベルンへ向かう。そのあとはフランス・リヨンへ行き、パリ、ロンドン、カーディフ、エディンバラと今度は北へ。そのあとは飛行機でアイスランドへ。そしてまた飛行機に乗って今度はスペイン・マドリード、ポルトガルのポルト、リスボンを折り返し地点としてもう一度東へ戻りバルセロナについたら南イタリアのパレルモへ飛ぶ。そこからイタリア半島を北上し、ナポリ、ローマ、フィレンツェ、ベネチア、そして最後にミラノに辿り着くと言う、果てしない旅を予定している。実際のところこのような長旅を本当に遂行出来るのかはまだ分からないが、前回の旅が104日間に及ぶ長期放浪であったことを踏まえると、体力的には問題なさそうだ。

6/18 0:17、成田第1ターミナルに到着。今回は台湾旅行以来の空港泊。厳密には早朝出発のため仮眠は取らず、5時のチェックインまで作業などしつつ時間を潰す。
カメラの動作チェックも兼ねてすこし歩き回って写真や映像を収めた。

今回の撮影機材は二つ。写真メインのSonyα7iiiと、映像メインのDji OsmoAction4。一眼のレンズはタムロンの28-200mm高倍率レンズを使用し、OA4は超広角から広角をカバーするため、ほとんど場面に適応できるよう工夫した。当初Dji製品に関してはOsmoPocket3が評判が良いためかなり迷ったが、小ぶりなジンバルカメラを安心して運用するには少々落ち着きのない性格なため、自分の特性を考慮しより耐久性に信頼があるアクションカメラを利用することにした。POV視点なども気軽に準備できる上、耐水性のあるOA4の方が取り回しがしやすいこともその決定に大きく寄与した。

兎にも角にもこのような長期間のリサーチ活動を無駄にしないよう、バッテリーや記録媒体などのアクセサリも慎重に考慮し選択した。

ターミナル1の外のロータリーにいたスパイダーズ。


とりあえず雑感含め今回の旅程の動機や目的をざっと記述した。これらの前提を踏まえつつ、時には想定外の出会いや体験にも柔軟に対峙し、臨機応変に愉しむことで豊かな時間を過ごすことが出来ればと思う。

今回の旅を最後に、当面の旅行の予定はない。未練なく旅を終えることができるよう、自分としっかり向き合いながら欧州のあらゆる文化文明を探訪できればと思っている。

成田空港第1ターミナル、青いベンチのミーティングポイントにて執筆。ここ以外は前回も満席で、今回も同様に爆弾のようなイビキをかいて寝ている外国人がいる。周囲の方々は睡眠を妨害されて不愉快そうにしているが、寝ないで時間を潰している私取っては都合のいい存在で、時折寝言を発しているのが聞いてて楽しい。

そろそろ旅が始まる。三日坊主ゆえに旅の記録をコンスタントに残せるかが大きな課題ではあるが、今回はテーマが明確にあるため一種の義務感のようなものが芽生えている…と自分に言い聞かせ、自ら習慣づけを促している。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。
旅の無事を祈りつつ精進してまいりますので、皆様どうかよろしくお願いいたします。

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