ヴィヴェーカナンダとYOGAと世界宗教会議
ヴィヴェーカーナンダが1893年に、シカゴの世界宗教会議でスピーチを行ったおかげで、現代にYOGAが普及された、といわれています。
なのでどんな風にヨーガを語ったのだろう?と昔から興味があったのですよ。ということで『シカゴ公演集』を読んでみました。
でも、彼が語った内容はヒンドゥー教の教義のひとつである[アドヴァイタ]ヴェーダーンタの事だったのですね。
それは「有史以前から伝えられてきたゾロアスター教、ユダヤ教、ヒンドゥー教と、そこから派生した多数の宗教の全てに対する共通基盤として『アドヴァイタヴェーダーンタ』の素晴らしさを西洋世界に伝えるもの」という筋立てでした。
ちなみにヒンドゥー教とは、イスラム教徒によるインド侵略後、それまでシヴァ教、ヴィシュヌ教、女神教、etcといったローカル宗教を『インド教(ヒンドゥー教)』とまとめて呼んだような物と言われているので“有史以前から”は存在していないのです。有史以前から存在したといわれているのはヴェーダの宗教(バラモン教)ですね。
では『バラモン教』とは?と疑問が湧きますが、これはヨーロッパ人が便宜的に付けた名前です。最上位カーストのバラモンが神々を呼び出し、[もてなし、]願いを叶えてもらう。という儀式宗教全般を指します。呼び出す神々は、願いの内容によって戦神、雨の神、火の神、愛欲の神等さまざまな神が呼び出されました。
西洋の一神教の人々は驚いたでしょうね、彼らの神は唯一にして絶対だし、その言葉は預言として残されており、人はそれに従うことが正しい行いであり、“神を使役する”なんて考えたことも無かったでしょう。
『神々を呼び出す』『神々に命令して願いを叶えさせる』(サンスクリット語で語られたヴェーダ文献の中には、命令形で神々を操るマントラが有ります)つまりヴェーダのマントラを自在に操る人間(バラモン)は神より強い(偉い)のです。
ヴィヴェーカナンダは、ほとんどがキリスト教徒の世界宗教会議でそんなことを言えば、どんな袋叩きにあうか承知していたからわざと言わなかったのでしょう。魔女裁判に繋がったらインドが火の海にされてしまいそうです。
それよりも梵我一如のヴェーダーンタ思想を打ち出すことで、少なくとも神(GOD)=ブラフマン(梵)、神の子(キリスト)=アートマン(我)と西洋人に思い込ませることが出来ますから、キリスト教とヒンドゥー教は敵対するものではない、と思わせてヴェーダーンタ思想を紹介したのは、戦略的に大成功といえます。
でもこの段階ではYOGAについては語っていないんですよね。語るのは1895年以降にアメリカでの公演であったといわれることしかわかりませんでした。
YOGAというよりヒンドゥー教について
・西洋人に布教する
・インド人にはヒンドゥー教の宗教改革を目指す
という感じです。
アドヴァイタヴェーダーンタの教えに基づいてバガヴァッド・ギーターを説明し、カルマ・ジュニャーナ(ギヤーナ)・バクティのヨーガを語った事と、[ヴェーダーンタ哲学とは派閥の異なる]ヨーガ学派のヨーガスートラをどのように結びつけたのかは不明のままです。
交流のあったマックス・ミュラーが“悪魔的なもの”と呼んだ、ハタヨーガやヨーガスートラの3章(超能力の章)を、彼がどのように考えていたのか、は特に知りたい部分です。またハタ[ヨーガ]・プラディーピカに書かれている“ラージャヨーガ”とは別の解釈として、ヨーガスートラのヨーガを『ラージャヨーガ』と呼んだのは何故なのか?などをご存じの方がいらしたら、是非とも教えてください。
彼の師匠のラーマ・クリシュナはタントラやイスラム神秘主義の修行をしており、師匠の超能力に触れてもいるのだからヴィヴェーカナンダが知らないわけではない筈です。
キリスト教徒には理解されにくいからなんだろうな、とは思うのですが、そんなのは個人の感想にすぎないので明確なソースが知りたいのでした。
調べた結果の関連情報も残しておきます。いつかこれで記事を一本書けそうです。
・西洋世界にヨーガスートラを紹介したのはヘンリー・トーマス・コールブルック(1765 - 1837)のようです。
・神智学のヘレナ・P・ブラヴァツキー(1831 - 1891)
ニューヨークで設立された「神智学協会」は、創設者のブラヴァツキー夫人とオルコット大佐が、1879年にインドに本部を移し、『ヨーガ・スートラ』などの文献の翻訳、チャクラなどの概念を欧米に紹介し、ヨーガへの貢献が大きかった。
・インド研究の第一人者 マックス・ミュラー (1823 - 1900)
ヨーガ・スートラの3章は『超能力のグロテスクな誇張』『ヨーガが知的なものから悪魔的なものへと変容していった、その予兆がみられる』と言って、3章以降を否定した。
#ヴィヴェーカナンダ #YOGA #ヨーガ #ヨーガスートラ #ハタヨーガ #ラージャヨガ #ラーマクリシュナ #ヴェーダーンタ #アドヴァイタヴェーダーンタ #ヒンドゥー教 #バラモン教 #世界宗教会議