最近noteで読みがいのあった小説2024.7
このところ、相互フォローの方に加えて、note創作大賞2024に応募しているみなさんの作品を読んでいます。そのなかで、特に読みがいのあった小説を紹介します。
スキかどうかではなくて、他の人にも読んでほしい、現時点の上村には書けそうにない、すごーい、面しろーいという観点から、二つ以上の要素がある作品を選んでいます。
紹介する順番には、なんの意図もありません。
「冷やしだきしめや、始めました。」(説那 さん)
コロナの前は、駅前でハグしますというような人を見掛けることがありました。
この小説は、だきしめてくれるけれど、暑苦しくないという稀有な能力を持った人と、何人かのお客さんとの関わりを描いた作品です。
読み終えると、心が温かくなります。
「パン屋 まよなかあひる」(皐月まう さん)
創作大賞2024の応募作です。
夜中にだけ開店するパン屋さんを舞台にした人間ドラマです。
物語の軸がはっきりしています。
主人公は最初死のうとするんですけど、死ねない。
主人公に居場所を与えてくれる店主リッカさんのキャラクターが、魅力的です。明るくて、さばさばしてて、パワフルで、けど、この人も事情を抱えているんです。「魔女の宅急便」のおそのさんみたいです。
彼女のおかげで、主人公もすこしずつ生きる力が戻ってきます。そして、人のために動けるようになってくる。いいですね。
こんなお店、寄ってみたいですね。
「カメムシ」(すずめ六花 さん)
掌編ですが、長い人生、そして生態系という大きな世界を感じさせる物語です。それなのに、説教臭くない。見事な手腕です。
遊びにやってきた孫に対して、齢を重ねてきたからこそ言える実感の籠ったセリフが印象的でした。とたとた、という擬音もかわいい。
「つぐみの独立国家宣言」(たかひこちゃん さん)
創作大賞2024の応募作品です。
作者さんが、子どものことを観察する能力が高いのか、子どもの頃のことを鮮明に憶えているのかわからないのですが、
くすっと笑ってしまう子供らしさにあふれた作品です。子どもってこうですよね。なんか、いいですよね。
「傾国老人」(神原月人 さん)
創作大賞2024の応募作品です。
もう事実上は引退している稀代の筆跡鑑定士が、孫と共に遺言書の筆跡鑑定に挑むという物語です。
まだ上村は途中までしか読んでいないのですが、物語世界の作り込みが細かく、具体的です。これからどうやって判決が確定した事案を覆していくのか、楽しみです。
「裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は…」(十五皐月 さん)
連載中で、上村はまださらに途中を読んでいるのですが、
ぐいぐいとこっちに行ってはいけないというような世界に、主人公を引きずり込んでいく女性、そして夜を感じさせる怪しい空気感がどのシーンにも漂っているところに、作者さんの筆力を感じます。