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デジタルとリアルをつないで地域課題解決に貢献する!~Tableau×QGIS×オープンデータ~【前編】


執筆者プロフィール

松本春菜(まつもと はるな)

松本春菜(まつもと はるな)
東京都江戸川区出身。前職は企画営業会社にて営業とディレクターを経験。
2020年12月DA入社。データマネジメント、データビジュアライゼーション領域を中心に、データ活用におけるコミュニケーション設計と、データ可視化による意思決定支援、データマート整備等を担当。
大学院では都市デザインを専攻し、「フィールドワーク」×「地図」に熱中する。
2021年夏、当時の常駐先でTableauに出会ったことがきっかけで、データ可視化の面白さと奥深さに気づき、「地図」をデータ可視化という視点から再構築する活動にハマる。
2022年5月、自社で初のDATA Saber認定(二つ名:Riverstream)。
2024年7月現在、育成した弟子は社内外合わせて8名。
DATA Saber - Bridge 2nd師匠。地図Tableauユーザ会幹事。
社内活動「ビジュアルアナリティクスラボ」幹事会代表。
Tableau×地図表現で複数イベントに登壇歴あり。

・ポートフォリオ
Tableau Publicポートフォリオページ
【個人】はてなブログ(最近更新してないので頑張ります)
・SNSアカウント (主に作ったVizについてのつぶやきや感想を投稿)
→X:@PigeonWing456
→FB:https://www.facebook.com/profile.php?id=100017930730635

はじめに

ビジュアルアナリティクスラボは、「データ可視化」を武器にしてデータ活用を民主化し、様々な社会課題解決に貢献していくことをミッションに2024年4月に発足しました。ラボには複数の部門がありますが、今回はそのうちの一つ「コンペ・PJチャレンジ部門」の紹介をしたいと思います。

「コンペ・PJチャレンジ部門」の位置関係

「コンペ・PJチャレンジ部門」とは?

この部門は、ラボの中で「応用領域」に属しています。基本領域で培った技術を武器に社外のまちづくりコンペに参加して、身近な地域課題をテーマに改善提案を行うプロジェクトです。メンバーには企画段階から参加してもらい、対象地域とテーマの選定、仮説だし、データの収集と加工、分析を経て、成果をTableauのダッシュボードとしてアウトプットします。ここで得られるのは、データ分析スキル、可視化スキルはもちろんのこと、プロジェクト進行管理スキル、関係各団体との交渉スキル、施策提案スキル、オープンデータの収集と加工スキル、さらに場合によってはフィールドワークからデータを作り出す体験など多岐にわたり、メンバーが一つのコンペで各方面の実践的スキルを磨き、様々な体験を蓄積することができるように設計しています。

ダッシュボードの例。大正時代・月島の「社会地図」。労働者の町ゆえに「レバカツ」や「もんじゃ」というローカルフードが誕生した。松本作成

現在、「応用領域」では最多となる10名のラボメンバーと、ラボ外から技術顧問として空間解析に強いメンバー1名を迎え、総勢11名で活動しています。ラボで最も勢いのある部門です。私(松本)は本部門の部門長として、各チームの進捗管理や技術面のサポートを担当しつつ、自分でも手を動かしてデータ加工から可視化のアイディアだしを行っています。

我々が参戦するのは、JTUG(日本Tableauユーザーグループ)が主催する「オープンデータバトル」というハッカソン・イベントです。イベントの趣旨は「地方創生(東京でもよい)」と「オープンデータ活用」であり、データ可視化によって地元の魅力をプレゼンし、あるいは地域固有の課題解決に寄与することをゴールとしています。偶然、ラボ幹事会メンバーの1人が当イベントの運営メンバーだったことから、トントン拍子で参加が決まりました。

空間データ×GIS

今回はまちづくりコンペなので、当たり前のように空間データが登場します。元々、弊社で空間データの扱いに慣れたメンバーも、空間データに興味があるよ!というメンバーも、ほぼ皆無だったのですが笑、これをきっかけに空間データとその分析に興味を持つメンバーが増えてくれました。私から特に何も言わなくても、オープンデータカタログからダウンロードしたshapeファイルをTableauに読み込んでみたり、GISツールをインストールしてマニュアル片手に恐る恐る触ってみたり、これまで扱ってきたデータと全く異なる形式に四苦八苦しながらも、果敢なチャレンジが散見されるようになりました。私とて空間データのプロではなく、大学院時代にちょっとかじった程度なので、彼ら彼女らの取り組みや、素朴に投げられる疑問から改めて学ぶことが多く、私自身の学びなおしにもつながって、まさにラボ幹事として、部門長としての冥利に尽きるというところです。

なぜ「まちづくり」なのか?

ラボのミッション・ビジョンは、「「可視化」を武器にデータ活用を民主化し、様々な社会課題解決に貢献すること」です。そのために課題解決・提案型のハッカソン・イベントが有用なのは言うまでもありませんが、それだけでまちづくりコンペを選定したわけでもありません。

多種多様な業種間のつながりから立ち現れてくる「都市・地域」

我々は普段、「データ」という観点からクライアントの業務支援を行っています。我々がかかわるクライアントは多種多様な領域に及び、彼らの提供するサービスを我々は日常生活で享受しています。生鮮食品を扱うスーパーやコンビニ、日用品を購入するドラックストアなどの小売店。ランチや飲み会で利用する飲食店。休日に誘い合わせて遊びに出かける遊園地やテーマパークなどの娯楽施設。通勤通学に、休日の移動に欠かせない電車やバスといった交通手段…それらは単独の存在ではなく、相互にかかわりあって成立しています。例えば、飲食店は銀行の融資を受けて開業し、食材は卸売市場や契約農園、近所のスーパーなど幅広く調達し、いくつかは配送業者に運搬してもらうこともあるでしょう。従業員は電車やバス、自転車等を利用して出勤し、顧客を運ぶのもまた同じ交通機関です。それら複数業種間の有機的な経済システムを、ある一定のエリアに切って考えた場合、それが都市であり地域となります。

見上げればお月様。文京区湯島の俗称「お化け横丁」。かつて花街があったこの小さな路地には、今でも無数の飲食店舗がひしめき合い、それぞれの店の経営が隣り合っている。松本撮影

我々はクライアントビジネスから物事を見ているのですが、これを都市・地域という単位で見直してみよう。そこから新しい世界が開け、日常生活が、少し違って見えてこないでしょうか?

また、クライアントビジネスを知るデータのプロが都市に関わるということは、従来の都市計画・都市デザイン分野で欠如してきた視点なのではないかと、個人的に考えています。一般的な都市計画の担い手である建築家や都市計画プランナー、都市デザイナーと呼ばれる人々は、空間設計やデザインのプロではありますが、個々のビジネスをあまり深く理解してはいないからです。都市空間を構成しているのは多種多様なビジネスです。ビジネス目線で都市空間を捉えなおすのは大事なことではないでしょうか。

デジタルとリアルを接続する!

まちづくりコンペを選んだもうひとつの理由。それは、デジタルとリアルを接続したいからです。
我々は普段、データベースであれ、可視化プラットフォームであれ、Webサイトであれ、アプリの画面であれ、様々なデジタル空間を相手にしています。実際、我々の毎日にデジタル技術は欠かせません。しかし、どんなにデジタル領域が拡張しようが、その背後には物理世界に生きる我々という「存在」があります。ある店舗の販促プロモーションのため、WebサイトやSNSを駆使して集客したお客様は、最終的に実店舗に来客されるのです。もちろんECサイトへの流入や購買で完結する場合もあるでしょう。それでも多くの場合、コンバージョンポイントはデジタルだけで完結しえない。そこにリアルな世界がある以上、デジタルとリアルをまたいだ人やモノの動きを「データ」として追いかけることの重要性は、少しも揺るがないのではないでしょうか。

我々にはTableauという強力な相棒がいます。QGISというお友達もできました。今こそデジタルとリアルをつなぎ、我々は、都市に回帰したのです。


→「後編」に続く


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