【アドベントカレンダー2023:5日目】エベレスト日本人初登頂と「決めること」
みなさんこんにちは!
株式会社メンバーズ データアドベンチャーカンパニー(以下データアドベンチャー)カンパニー社長の白井です。
気づけばもう雪の便りが届く季節となりました。はやく雪山を登ったり滑ったりしたくてうずうずしています。
今日は今年を振り返っての実感と学びを、趣味の山の話に絡めてお伝えします。
今年の漢字1字
「決」
2023年は、組織も大きくなり、権限委譲を積極的に進めた年でした。5年前に2人から始まったデータアドベンチャーも今や150人を超える規模です。提供サービスの幅も増え、データ活用の戦略設計から運用まで一貫して担える、業界でも数少ない支援会社となりました。
親会社である株式会社メンバーズのオフィスの片隅で創業し、数名で机を寄せ集めて仕事をしていたデータアドベンチャーも、いまやカンパニー社長の私の下に各事業部や部門のトップがいる多階層組織です。
特に今年は、創業以来私が指揮をとってきた主幹事業の事業部長職を部下に委譲したり、別の部下を責任者として新しい部門の立ち上げを行ったり、私にとって初めて経験することがたくさんありました。
そんななかで、組織のトップとして一番大事なことは何かというと、「決めること」だなと改めて実感しました。
エベレスト日本人初登頂
世界最高峰のエベレストに日本人が初登頂したのは1970年のことです。日本山岳会エベレスト登山隊の一員として、頂を踏んだうちの一人が植村直己氏です。このときの同隊の登山について、『日本人とエベレストー植村直己から栗城史多まで』(山と渓谷社編、2022年)ではこう評しています。
「世界最高峰の頂に日本人が立つ、という最低限の目的は達した。しかし、何よりもの目標だった「南壁初登攀」は成らなかった。「成功」と「失敗」の両方の要素を持つ、総括の難しい登山が終了した」(第一章「初登頂へ、二つの登山隊」、江本嘉伸執筆)
当時、エベレストはすでにイギリスをはじめ複数国の登山隊により登られている山であり、日本隊の挑戦には「今更という感」(前掲書)もありました。ただし、それは一般的なルートからの登頂に限った話であり、「南壁」を通るルートからの登頂はより難易度が高く、世界で誰も成し遂げていませんでした。そこで、同隊は、「日本人エベレスト初登頂」「南壁初登攀(南壁ルート初登頂)」の二つの目標を掲げ、エベレストに挑戦していくことになります。
結果は前述の通り、「日本人初登頂」は達成、「南壁初登攀」は未達成となりました。この背景には「「日本人初登頂」を確実なものにするか、パイオニアワークとしてははるかに価値が高い「南壁初登攀」を第一に考えるか、当時の日本山岳会首脳部の”揺れ”があった」(前掲書、同章)という見方もあります。どちらか一つを達成するにしても実力、物資、日数ともにぎりぎりななかで、ゴールを絞り切れていなかったというのです。
集団にとって「決めること」の意義
日本山岳会エベレスト登山隊は、実際に登攀を行う本隊は約30名(ほかシェルパ50名)、登山準備に関わった人数は100名を超える大所帯です。この人数になると、集団内の意思統一は大変です。
前掲の二択は、どちらが正しい/間違っているというものではありません。どちらを重視するかという価値観の問題です。
事業経営においてはこの種の選択がよく発生します。このとき、成員の議論によって結論がでることはほぼありません。何を捨て、何を取るのか。何を目指すのか。意見は出し尽くしつつ、最終的にどうするのか決めるのはリーダーの役割です。
そして、それを決められないまま時がすぎると、その取り組みは多くの場合失敗します。同床異夢では難事を成し遂げることはできないのです。同じゴールに向かって、全員が力を出し尽くす。議論の場では異なる意見を持っていた人も、決定後は心を一つにして役割をまっとうする。それを可能にするのは、リーダーの「決める」という仕事だけです。
リーダー責務は「決めること」
唐突な山の話から、やっと仕事の話に戻ってきました。そうです。「決めること」。今や150人を超える組織であるデータアドベンチャーは、カンパニー社長である私が全員を理解し、直接指揮できる規模ではありません。中間のマネジメント層が、メンバーと日々コミュニケーションを重ね、その上で事業経営に関わる意思決定を伝え、実行に移していきます。
そのときに必須なのは、プロセスでも、武器でも、予算でもなく、リーダーの決定なのです。「日本人初登頂」を取るのか、「南壁初登攀」を目指すのか、どちらの選択もありうるなかで、今我々はこれを目指すんだという決定です。その決定があれば、じゃあそれを実現するために各チームは何をするのか、どんな役割を遂行するのか、議論を積み重ねていくことができるわけです。
決定がなければ、この場合はこう、この場合はこう、と、選択肢の数だけ議論が必要になり、時機に間に合わないか、全てが中途半端なまま場当たり的な対応に終始することになります。階層化された組織では、チームの数だけそんな苦労が生まれることになりますし、思惑もよりばらばらになります。
貴重なメンバーの力をそんなことに使わせてはならない。メンバーの持っている力を最大限効果的に使える場を用意することが、リーダーの責務です。リーダーが何を目指すかを決め、マネジメント層がそれを達成するためのチームの行動を決めていくのです。
今年、それがわかって、ようやく多階層組織がうまく回り始めた感があります。各部門、それぞれがそれぞれのやるべきことに集中する。役割を果たす。その結果、私が描いた「これを目指そう」という状態に確実に近づいている。中間マネジメント層がいなかったときより何倍も早いスピードで。
今年、データアドベンチャーは、いくつもの沢が合流して大きな流れになるようなダイナミズムのなかにいました。
終わりに
ということで、今年は「決めること」の大事さを実感した年でした。
少しずつ私も決めるという仕事に慣れてきたので、来年は決定の精度をもっとあげられたらいいなと思っています。
来年も皆でより大きな流れを作って前に進んで行けたらと思います。よろしくお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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